スシロー「1皿100円」終了へ。38年間値上げせずにすんだワケ
安定して材料を仕入れるための施策もさまざま
くら寿司の危機意識は衛生面に留まりません。安定して材料を仕入れるため、
・自社で養殖から加工・販売まで行う「スマート養殖」
・定置網にかかった魚を年間契約で全量買い取る「一船買い」
・未成魚を寿司ネタサイズまで育て活用する「天然魚“魚育”プロジェクト」
など数多くの危機対策を施しています。これらは、長期的には収益に結びつくものの、固定費の増加要因でもあります。固定費率が高いため、値上げによる売上・客数減少のリスクが高い。変動費率が低いため、値上げの緊急度は低い。スシローと対照的な利益構造が、値上げに対する意思決定を異なるものにしているのです。
「ついに、100円皿がなくなってしまった」。消費者にとっては、実際の負担よりも心理的影響のほうが、大きいかもしれません。できれば、次の値上げは、しばらく先にしてほしい……。そう願うばかりです。
<TEXT/中小企業診断士 関谷信之>