回転寿司なのに「本格スイーツ」、スシロー本気の“専属パティシエ”誕生の経緯
「本格」を追求しすぎて過去には失敗も…
年間で約250種類もの新作を社内プレゼンしているというスシローカフェ部。その中で商品化されるのは50種類程度という狭き門だ。開発の数だけではなく、ひとつひとつに込められる情熱も甚だしく、それによっての失敗も過去にはあったそう。
「かつて、店内で提供直前に手絞りする『手絞りモンブランパフェ』という商品がありました。すし屋なので、すしを作ることに慣れているが、本格的なスイーツを作るには慣れていない店舗スタッフには、マロンクリームを手で絞ることが難しくて、お客様から『写真と違う!』といったお声をいただくこともありました」
このような失敗や、よりスタッフにわかりやすく伝えられるように、開発したパティシエが動画で店舗スタッフに作り方をレクチャーする仕組みがつくられた。工場と店舗のオペレーションの棲み分けは難しいポイントながら、スシローが大事にしている部分でもあるようだ。
「有名なショコラティエの方などとのコラボ商品も数々あります。こうしたものは最近は量販店でも見かけますが、うちの強みは店舗で最後の仕上げの調理ができて、それによってアイデアの幅も美味しさもアップさせられることなんですよね」
スイーツから寿司へ、寿司からスイーツへ
毎週開かれる、社長を含めた役員一同が試食をする社内プレゼンでも、スタッフの工数がかかりすぎることを理由に、試作しなおし……となったことが何度もあるそうで、本格的なものをスシロー価格で提供する苦労が窺えた。最後に、今後の展望を平野さんは次のように語る。
「スシローは、お寿司のメニューも多いのでデザートまでたどり着かないお客様もたくさんいらっしゃいます。そうした方にも、スイーツまでがスシローなんだと思ってもらいたいですね。また、『お茶をしよう』と思った時に、カフェやファストフード店以外の選択肢として、スシローに来てもらいたいですね」
座席の特性を考えると、ファストフード店よりもスシローのボックス席の方がゆったり過ごせる。「ティータイムの選択肢にスシロー」という人が増えてくる日も近いのかもしれない。
<取材・文/Mr.tsubaking 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>