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退職後に「実はセクハラされた」は有効?法改正で変わる内部通報制度

学び

日産、オリンパス…内部通報が重要に

日産

(C) Alexandr Blinov

 2018年に日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)が金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された事件は内部通報がきっかけと報道されています。内部通報の対象は幅広く、企業内で起きる「横領」「不正アクセス」「個人情報流出」「データ偽装」「ハラスメント」なども含みます。

 2006年には精密機器メーカー・オリンパスの男性社員が上司の不正を内部通報したことをきっかけに「報復人事」「パワハラ」被害に遭うという、あってはならないことが起きています。実態は報復も可能であった会社組織の黒い部分を排除できる法改正になることが期待されます。

 企業内の従業員がコンプライアンス問題を担当することは困難になってきています。例えば社内に設置されたハラスメント相談窓口の場合、現状は専任の担当者ではなく通常業務を抱えながら兼任させている企業が多いです。

ますます専門性が求められる時代に

 2019年に成立したパワハラ防止法では社内のハラスメント相談窓口担当者向け研修の実施が義務化されましたが、今回、公益通報者保護法が改正されることも重なり、担当者はますます専門性が求められる時代になったと言えるでしょう。専門ではないのに担当者として指名され、トラブルに発展してしまう最悪のケースは担当者本人としても企業側も避けたいところです。

 筆者が代表理事を務める日本ハラスメント協会が企業の内部通報窓口を担当している事例で、被害者が退職後に「実はセクハラされていて……」と相談をされてきたことが以前にありました。被害者は調査を希望されていましたが、すでに退職していたこともあり、企業側に誠意ある対応をする意思があるかが焦点となりました。

 しかし行為者がセクハラ行為を繰り返してはならないので、調査することを強く助言したところ、被害者の希望通り調査が行われ、行為者はセクハラで処分されました。この事例は法改正より前のことですが、今年6月からの公益通報者保護法改正では、上司のセクハラ行為を退職した被害者が報復で通報する可能性もありますので、報復に震える上司が急増してもおかしくありません

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