10年で2000軒が消滅…“老舗銭湯”30歳店主に聞いた「サウナにはない銭湯の魅力」
水質やお湯の焚き方に注目しても面白い
「あとはちょっとディープかもしれませんが、水質、水の硬さや柔らかさだったりとか、お湯の焚き方、ガスか薪かなども特徴が現れて面白いです。個人的な感覚ですが、同じ温度でも、ガスより薪のほうがピリピリとしないというか、柔らかさを感じます」
ちなみに薪の場合、窯場にたくさんの薪がストックされているので、裏手に回ってみると分かったりすることがあるそう。
意外と気にしておらず、言われて見ると気づく盲点だった。ちなみに長谷川さんはお湯に浸かるとガスか薪か、なんとなくくわかるそう。すごい。
非日常ではなく日常に
最後に昔ながらの銭湯の未来について聞いた。
「スーパー銭湯、日帰りスパなども増え、昔ながらの銭湯も『お遍路マップ』を作ってみたりだとか、だんだんと銭湯をテーマパークのように、非日常を味わう施設として楽しむ人も増えてきたように思います。
でも、個人的には気負って訪れるのではなくて、改めて昔のように、家のお風呂と同じ感覚で入りに行く、日常に溶け込んだ場所になるといいなと思います。特に、東京都内は減っているとはいえ、地方と比べるとまだまだ昔ながらの銭湯が残っていますので。
千代の湯も先代から続く昔からのお客さんの社交場としていまだに機能しているので、これからもそういう機能は果たせると良いなと。喫茶店みたいにふらっと立ち寄って、みんなの生活に近づける場として、ぜひ昔ながらの銭湯にも足を運んでみてください」
取材後、14時の開店に合わせて千代の湯に地元の方々が集まっていた。筆者も入ってみると、普段訪れるスーパー銭湯に比べるとお湯が熱い。だが、皆に楽しめる温度になるようにと、常連客から文句を言われながらも、これでも少し下げたんだそうだ。
常連の皆さんのお互いの体調を気遣う言葉を聞きながら、足を伸ばしてお湯に浸かるとだんだんと熱さにも慣れてきた。風呂から上がり、ビールを一缶飲んで外に出ると、まだ日は高かった。良い気分だった。
<取材・文/日和下駄>