「ジブリっぽいし、いいな」矢部太郎、絵本作家の父の絵に思い出すこと
芸人初の手塚治虫文化賞短編賞を受賞した『大家さんと僕』の大ヒットで、漫画家としても高い評価を得ている矢部太郎さん(44)。昨年6月に出版された、実の父である絵本作家・やべみつのりさんと、自身の幼少期のエピソードを描いた『ぼくのお父さん』(新潮社)も15万部を突破し、ファンを増やしています。この3月には特設ページに未発表の番外編を公開。
そんな矢部さんに改めて『ぼくのお父さん』の反響について、『大家さんと僕』の大家さんから受けた影響などを聞きました。
さらにM-1グランプリの予選当日に「出たくない」と行かなかったという過去エピソードや、「天下を取りたいと思っていた」との一見意外な発言も飛び出しながら、続く言葉に矢部さんらしさが覗きました。インタビューの最後には『ぼくのお父さん』の漫画の一部も公開します。
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父も大家さんも自分をご機嫌にできる
――発売から日が経ちましたが、ずっと愛され続ける作品だと思います。さまざまな感想が届いているのでは?
矢部太郎(以下、矢部):「お父さん、すごく変な人ですね」みたいな感想とか、「でも憧れます」とか、いろんな感想を聞いています。歌人の枡野浩一さんは、去年の漫画ランキングに選んでくださったのですが、「作者のお父さんが酷ければ酷いほど、父になれなかった私が免責されていく気分」と書かれていて、そういった感想もあるんだなと思いました(笑)。
多いのは、父が自分の価値観のもとに好きなことをしていて、そこをいいと感じてくださっている感想ですね。僕もそうしたところに憧れるし、大家さんも、そうしたところがステキだったと改めて考えました。内的な価値観というか、自分の気持ちをご機嫌にする何かを見つけて日々を暮らしている。父も大家さんもそうした人かなと思います。
反響への母や姉の反応は?
――矢部さんのお母さまは、矢部さんのお仕事についてあまり感想を言わないそうですが、これだけ評判になった今もですか?
矢部:そうですね。だけど去年、くりぃむしちゅーさんが司会をやっている『世界一受けたい授業』に、父と一緒に出たことがあって。その収録前に父から聞いたのですが、母がその前の晩にクリームシチューを作ってくれて「これ食べて頑張ってね」と言っていたそうです。
――お姉さんの反応はいかがですか?
矢部:漫画の感想は聞いてないんですけど、僕も描くことでかつての日々が昇華された部分があるので、きっと姉もそういう部分があるかなと勝手に思っていますし、いろんな人に読んでもらえて「良かったね」とは言ってくれてます。ただ「家族のことを描かせてもらったから、家族みんなでの温泉旅行をプレゼントしたいんだけど……」と相談したら、「よかったら太郎も行く?」と言われて。当然、僕も行くプランで考えていたのでビックリしました。