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「ジブリっぽいし、いいな」矢部太郎、絵本作家の父の絵に思い出すこと

暮らし

背中を押してくれた大家さん

矢部太郎

――大家さんと出会われたのは30歳くらいの時かと。たくさんの影響を受けたと思いますが、なかでも大きかったことのひとつを教えてください。

矢部:歳が離れていたから、僕のことを「すごく若い」といつもおっしゃってくれてたんです。それで、また20代のころの気持ちになって、いろんなことにチャレンジできるようになれたと思います。

 その頃ちょうど気象予報士の資格を取ったりしていたので、ちょっと安定志向にいく道もあったかもしれませんが、でもとにかく、まだ何かできると思わせてもらって、実際、そのおかげで漫画も描けた。「まだまだこれからできる」という意識を持てたのは、大家さんのおかげだと思います。

――ほかに影響を受けた出会いはありますか?

矢部:事務所のみなさんにも支えていただきましたし、出会ってきたみなさんそうなんですけど、いまパッと浮かんだのは、浅野忠信さんです。板尾(創路)さんの映画(『月光ノ仮面』)でご一緒したときに、「何歳?」と聞かれて、「33歳です」と答えたら、「それはすごくいい歳だ。キリストが復活、再生した歳だから、矢部くん今は再生の時だよ」と言われて、周りのみなさんにも「そうや、そうや。髪伸ばしたりして、生まれ変わったらいいんや」とか言われて。

 僕、それまで自分の髪はバリカンで刈ってたんですけど、そこからちょっとずつ伸ばして美容院に行くようになったんです。だからその映画が、ツルッツルの頭の最後の僕です。

――そこから新たな矢部さんになったんですね。

矢部:だから僕もそのくらいの年齢の人を見つけたら、「いくつ?」と聞いて、「33歳」って出ないかなと思ってるんです。まだ言えたことはないですけど。「いい歳だ」って言いたいなと思って……。でも浅野さんっていうのも大きいですね。それがいつもお会いしているほんこんさんとかだったら、刺さらなかったかも(笑)。

絵本には苦手意識がある。でも描いてみたい

矢部太郎

――これからも再生し続けていく矢部さんを期待しています。ちなみにお父さんのように絵本を描きたいとは?

矢部:描いてみたいとは思ってます。お話をいただくこともあるんですけど、苦手意識があって。母と話したときに、父は紙芝居を描くのは得意というか好きなんだけど、絵本を描くのは苦手だと言ってたんです。

 たぶん紙芝居というのは、パフォーマンスありきのもので、ひとりで読むものじゃない。演じる人がいて、作品を補完して、その場に存在する。父は偶然性みたいな要素が加わるのが好きだし、合ってるんだろうなと。お笑いとか演劇とかにも似ているのかなと思います。

 でも絵本は、それで作品になっていて、めくって世界が広がっていく。僕も苦手意識がありますが、ひとつの残り続けるものとして、今は描いてみたいと思っています。あと、絵本、児童書というのは売り上げも好調だと小耳に挟みましたので(笑)。

――(笑)。最後に改めて、まだ読んでいない読者にメッセージをお願いします。

矢部:仕事の合間にもさらっと読めますし、話のネタにもなるんじゃないかと。社会人のみなさんは雑談が大事だとも思いますので(笑)、ぜひ読んでみてください。

<取材・文・撮影/望月ふみ>

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