「世界一厳しい消費者は日本人」フェイスブックジャパン元代表が語る、ヒットするブランドの作り方
ギフト需要を掘り起こし、売上増加も
「実際には言語化されていない、消費者の心の機微やインサイトをいかに見つけられるかが肝になる」と長谷川さんは話す。
「消費者からの『納品書や請求書が入らないようにできないか』という質問や、ギフト配送を選ばれる人の割合を鑑みて、クラフトビールには自分のためとしての消費ではなく、『友人や知人へ贈答する需要があるのでは』という仮説を見出しました。言葉としてギフトの要望は書かれていないものの、一定のギフト需要はあるという前提のもとで商品を販売したところ、2021年5月には過去最高月商を達成したんです」
信濃屋食品と協業して販売した「父の日 特選飲み比べギフト」は、父の日に向けたギフト需要と相まって、売上が通常比の10倍になったという。
以来、“記憶に残る乾杯”をコンセプトに誕生した「CELEBRATE ONE」や11月先行発売予定の紫芋を使用した宝石のように赤いビール「ルビーレッドエール」といったギフト商材のラインナップも拡充させ、消費者のギフトニーズに応えられるような商品展開も行なっている。
段階的に改善することで大失敗を免れる
他方で、消費者の声をもとに常に味やデザイン、商材などが短期間に変化し続けるということは、リニューアルしたことで逆効果となってしまい、顧客離反が起こるリスクもあるだろう。こうした懸念があるなか、長谷川さんはリスクヘッジの考えを次のように示す。
「消費者からいただくフィードバックは多種多様なので、まずはさまざまな意見から全体感を捉えたものを議論のテーブルに乗せ、生産者と対話を重ねるようにしています。ブランド共創型で商品開発をしている手前、作り手の蓄積されたノウハウや知見と、フィードバックとしていただいた意見のバランスを取ることが大事だと思っています。
また、一過性の視点で見ると劣る部分や物足りなさが出てくるかもしれませんが、クラフトビール作りにおける全体の枠組みの中で、『新しくて他にはない味わいと香り』を愚直に追い求めながら、軌道修正していく気概を持って取り組んでいます。
IT企業では一般的なアジャイル開発のように、段階的に改善しながらより良いものを作っていくことで大失敗せずに済みます」