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給料も物価も安すぎる日本の末路は?仕事を奪い合う未来を専門家が予想

ビジネス

給料も物価も安い日本は幸せか?

松尾匡氏

松尾匡氏

 最後に私達の生活は今後、どのように変化していくのか尋ねた。

このビジョンが最も恐ろしいと感じていることは、いったん完成すると当分は“持続”する、ということです。低賃金労働者が増えても、日用品が円高のために安く輸入できるため、何とか生活できます。また、少子高齢化に伴うケア労働への人材投与を促すことで、職を失う人が増えても深刻化はしません。

 確かに安い給料で、安い生活を強いられるため、多くの国民にとってはとんでもないことです。しかし、徐々に展開していくため、しばらくは“何とか生活できる”という体制が保たれます。いったんそうなれば、国民が危機感や問題意識を持つことは容易ではありません。

 そして、今後は円高を維持するため、プライマリーバランスの黒字化に固執し、緊縮財政をより徹底するでしょう。なにより、消費財は激安の輸入品ばかりになるため、消費税の引き上げが今まで以上に簡単になり、ますます国民や中小企業が追い詰められます。

 また、消費税増税を良いことに、『日本企業の競争力を持続する!』と称して法人税は引き下げされ、“生き残り”が約束されたごく一部の企業ばかりが優遇されます。現状の政治経済に関心を向けなければ、私達の子供・孫世代には、想像を絶するほどの格差社会が定着しているでしょう

<取材・文/望月悠木>

【松尾 匡】
経済学博士。1964年石川県生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。久留米大学経済学部教授を経て、2008年立命館大学経済学部教授。著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『「反緊縮!」宣言』『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(ともに共著、亜紀書房)、『新しい左翼入門』(講談社現代新書)等がある

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
Twitter:@mochizukiyuuki

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