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給料も物価も安すぎる日本の末路は?仕事を奪い合う未来を専門家が予想

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なぜ国民は反発しないのか

輸入イメージ

 国民の反発も起きそうなものだが、メディアを見ていても一向にその気配がない。なぜ、このことに関心が向けられないのか。松尾氏曰く、キーとなるポイントが2つあるとのことだ。

「安全性の危うい輸入品を日常生活で使用せざるを得ない、食料品を主に輸入していた国が災害に遭って日本国民が飢餓に陥る、貧困化による犯罪件数の増加、産業空洞化によって円安になっても国内生産できなくなる、などリスクは枚挙にいとまがない。

 しかし、この辺りが非常に巧みで、『国内は人口減少するから、海外に市場を求める・海外の富裕層をターゲットにする』『少子高齢化だから中小企業を潰して、浮いた人材を医療・介護に回す』『薄給の非正規労働者ばかりになるけど、激安品を輸入すれば何とか生活できる』など、ある意味“合理的”であるために反感を持ちにくい

 加えて、今後失業者が大量に出ても、そのストレスは政府ではなく、ライバルになり得る同じ失業者に向けられやすくなります。例えば、昔も正規労働者と非正規労働者は格差がありましたが、各々が担っている業務が違うため、雇用を脅(おびや)かす関係ではなかった。

 しかし、最近は正規労働者と非正規労働者の業務内容に差がなくなり、各々の立場間にいがみ合いが起きています。そして、国民は『日本は財政危機!』『借金1200兆円!』といったメディアが発信する“洗脳”をもろに受けているので、ひとり親世帯に支援金を支給するような困窮者支援を掲げても、『自分達の税金を貧乏人に使うな!』となりやすく、元凶である政府になかなか矛先が向けられないのです

反発の声が聞こえない理由は…

 合理的であるために反発が出にくい、ということはわかった。それにしても、もう少し声が上がってもいいのではと筆者は思うのだが……。

「自民党政権に対立するリベラル派の識者であっても、このプランに好意的な人は珍しくありません。そもそも、そういった人達の中には、あるはずもない財政破綻を危惧したり、為替相場によって簡単に変動するはずの国際競争力に固執したり、といった人は多い。

 さらには、環境改善を目指す“グリーンエコノミー”はリベラル派が最も関心を示す分野であり、国内の工場を畳んで海外に移転すれば“脱炭素”が実現できるため反発が広がりません。“脱成長”を掲げるリベラル世論も広がっていますが、国民の生活を犠牲にしつつも、生産拠点を国外に移すことで脱成長が図れるため、これまた歓迎されます。知ってか知らずか、リベラル派も菅政権が掲げるビジョンに加担しているため、反発の声がより聞こえないのです」

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