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小田急線刺傷事件、密室の凶行に対策は?「安全な場所はない」の意識を

ビジネス

「安全な場所はない」という意識を持つ

鉄道 緊急停止ボタン

  危機発生時は、安全を担保した上で情報をオープンにする必要がある。オープンにする内容としては、警察や駅関係者、医療関係者等、怪我人の搬送と、それ以外の利用客の避難行動である。

 ひとたびこのような事件が発生すると、特に首都圏では大規模なダイヤの乱れが発生し、他の利用客にも大きな影響を及ぼす。駅付近で、人の滞留が二次被害を誘発しかねないし、ひいては帰宅困難者や徒歩での移動者を多く生み出すなど、事態は災害時と似たものになりかねない。首都圏での交通機関が関係する事件や事故は、その及ぼす影響が大きい。とりわけ鉄道はそれが顕著である。

 公共交通機関内が犯行現場になりうる昨今、いついかなる場所でも危険があることを、ベースとして考えたほうが良い。つまり「安全な場所はない」という意識である。以前、海外旅行での「決まり文句」のようになっていたが、今は日本もそのフレーズ下に置かれているような気がする。

 全員が善良な市民であることは理想だが、そのような環境は地球上どこにもない。あくまで確率論だが、人口が密集する首都圏では危険の確率が高くなる。だが、その対策は、企業にとって投資に見合うものかを図ると、切り捨てられる部分もある。

  もちろん、全てを運営する側に委ねてはならない。リスクは常に身近にあることを考慮した行動が必要だ。それがたとえ公共交通機関内であっても必要なのだ。自らの身は自ら守る、古いようだがこの言葉を改めて噛みしめざるを得ない。

<TEXT/防災・危機管理アドバイザー 古本尚樹>

防災・危機管理アドバイザー、医学博士。専門分野は新型コロナウイルス対策、企業危機管理、災害医療、自然災害における防災対策・被災者の健康問題等。企業や自治体の人材育成にも携わっている。個人サイト「防災・危機管理アドバイザー 古本尚樹

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