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業界の常識を作った「くら寿司」取締役が語る“最大のライバル”との闘い

ビジネス

アフターコロナに向けた仕込みも

 まだまだ先の見えない社会状況だが、くら寿司はアフターコロナを見据えた準備をすでに着々と進めているという。まずは、海外からのインバウンド需要を見越したジャパンカルチャー発信型のグローバル旗艦店の出店を始めているのだ。

くら寿司

2021年4月22日にオープンしたグローバル旗艦店「くら寿司 道頓堀店」の様子

「2020年1月には東京の浅草に、2021年4月には大阪の道頓堀にグローバル旗艦店をオープンしました。寿司は日本の食文化を象徴するものでありますが、どんな世界観を持っているのかということも海外の人へ伝えたいと考えています。そこで『SightEating(サイトイーティング)』という「観光」×「食事」のコンセプトを打ち出し、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんとタッグを組んで、新たなくら寿司の魅力を発信できる新店舗を出店しています。今後も、日本で有名な観光地を中心に店舗拡大をしていく予定です」

 そして今後は、都心部の店舗について、100店舗を視野に出店を加速させていくと岡本氏は意気込む。

「大手回転寿司チェーンがこれまで出店してこなかった“空白地帯”は、都心部のエリアでした。ただ、それには理由があり、駅前の立地は他の飲食店が入居してて、なかなか空きがなかったんです。でもそれがコロナ禍でお店を閉める物件が出てきたことで、参入する余地ができた。完全非接触型の『スマートくら寿司』という店舗運営の“型”がようやく完成したことも相まって、これから都心の立地に狙いを定めて積極的に出店攻勢をかけていきます」

首位浮上の鍵はライバルとの“市街戦”

くら寿司

 だが、最大のライバルであるスシローも同様に都心部の出店を強めていることから「いい不動産の取り合い状態になっている」と岡本氏は言う。

新規出店が決まったエリアの目と鼻の先にスシローさんが出店することも多い。まさに都心エリアでの“市街戦”が起こっているといっても過言ではありません。ただ、そのエリアに出店するからには手を引くことを考えずに、根を張ってビジネスをやり続けるのが企業精神ですので、強固な財務基盤を支ベースに、今後も出店ペースは落とさずにこれからもいきたいですね」

 ますます業界首位を巡る競争が激化するなか、くら寿司の今後の事業展望について岡本氏に聞いた。

「グローバル旗艦店の展開や都心部への出店強化、さらにはコンタクトレス&タッチレス型の『スマートくら寿司』を2021年末までに国内全店導入を目指しています。また、次の事業の柱については、米国、台湾に次ぐ新たな国へグローバル進出も行なっていきたい。くら寿司はその地に根を下ろし、名実ともに現地企業と認められる企業を目指していくので、どこのエリアで勝負するかも含めて事業の青写真を描いていきたいと思います」

 業界に多くのイノベーションをもたらしてきたくら寿司。国内外の動向含め、今後の発展に期待したい。

<取材・文/古田島大介>

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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