引退した東京メトロ03系車両が、北陸鉄道で再デビュー。変身ぶりをルポ
運転台はワンハンドルマスコンに更新
熊本電鉄、長野電鉄の移籍車と同様、TIS(Train-control Information Management System:車両制御情報管理装置)を撤去。代わりに車両に不具合が発生した際の表示器、自動放送の設定機、ワンマン運転の対応機器を設けた。
これに伴い、運転台は左手にノッチ(主幹制御器ともいい、車両を走らせる「力行」や惰性を表す「切」で、速度を調節する)、右手にブレーキハンドルのオーソドックスタイプから、一体化した両手操作型のワンハンドルマスコンに取り換えた。北陸鉄道によると、設計費低減のため、東京メトロの車両で実績のある機器を選択したという。また、右側の計器類もブレーキ指令表示からノッチの力行とブレーキの段数表示に更新された。
車掌側(運転台の向かい側をさす)の行先表示器もタッチパネル式に更新され、操作性が向上。また、乗務員室内に車内監視用のミラーを設置した。
保安装置も北陸鉄道用のATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)に更新。最高速度は東京メトロ03系時代の110 km/hから70km/hに引き下げられている。
また、2021年5月15日から第29編成(北陸鉄道2編成目)が営業運転を開始。5月18日まで日比谷線カラーのまま走ったあと、5月19日から21日まで帯を張り替え、5月22日から本格運用が始まった。なお、03系は浅野川線のみ導入され、石川線の車両更新については検討中だという。
厳しい状況が続く北陸鉄道
北陸鉄道の浅野川線と石川線は、年間輸送人員350万人を採算ラインの目安としている。しかし、1999年度以降は採算割れが続き、2020年度は新型コロナウイルスの影響で、かなり厳しい状況に追い込まれている。
誘客の一環として、乗車駅限定ながら自転車も乗せられるサイクルトレインの実施、1日フリー乗車券や各種クーポン券の発売、ほくてつニュースの発刊を行なっている。
現在も時節柄の影響で遠方へ行きづらい状況が続いているが、明るい兆しが見えたら、北陸鉄道に乗りに行ってみてはいかがだろうか。