9割が“ノンアル”だと気づかない。サントリー「レモンサワーの秘密」を直撃
本当に“ノンアル”だと気づかないのか?
従来のノンアルコール飲料の製法では、本格的なレモンサワーの味を再現することが難しかった。開発担当が、レモンオイルを微細化し、レモンの香り成分をノンアルコール飲料に封じ込め、焼酎由来の旨味をノンアルコールのエキスとして凝縮させる技術を考案したという。
「ここから『レモンサワーありのまま製法』という、サントリー独自の製法が生まれました。ノンアルコールということを伏せて行った試飲アンケートでは、実に95.2%の人がノンアルコールだと気づかないくらい、通常のレモンサワーと遜色ない味を再現できた。さらに、8割以上の人が『ノンアルコールに対する味の感覚が変わった』と回答を得られました」
2021年3月2日から発売した「のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール」は、出だし好調で売り上げを伸ばしているそうだ。世の中のトレンドを汲み、ヒット商品を生み出すために意識していることについて松田氏に聞くと、「視野を狭めず、広い視点で見ることが大事」とし、次のように話す。
「常に視野を広げることを意識して、日々業務を行なっています。担当するノンアルコールカテゴリー以外にも、アルコール市場全体の動向や海外の最新情報、自社はもちろん他社のお酒も手に取って飲んでいます。アンテナを広く張っていないと、未充足のカテゴリーに可能性を見出すことはできない。今回の『のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール』でも、他社商品を飲み比べているうちに『甘い味が多い』ことに気づくことができましたね」
気軽に晩酌気分が味わえる文化を
コロナ禍で、リモートワークやテレワークを行う企業も増え、家飲みに対する消費者の意識も変化した。特に、ノンアルコール飲料については、ライフスタイルのさまざまなシーンで飲まれるようになったという。
「サントリー社内では、業務中にノンアルコールを飲む機会もありますが(笑)、朝から気合を入れるためにノンアルコールを飲んだり、お昼休みにお酒気分を味わったりと、ノンアルコールゆえの爽快感や高揚感を求めて飲む機会が増えていると思います。また、健康面に気を遣う意味でも運動やジムでのトレーニング後にノンアルコールを取り入れるなど、着実に裾野は広がっているという手応えは感じています」
他方、近年は若者の酒離れが叫ばれて久しい。酒類メーカーの立場として、今後どのような展望を持っているのだろうか。
「酒離れが進んでいる背景には『酔っている姿がかっこ悪い』『本当は好きじゃないのに付き合いでお酒を飲んでいる』など、いろいろな要因があると思いますが、一方でお酒が飲めない人が近年のレモンサワーブームに乗っかりきれない現状があった。そんな“晩酌への憧れ”が、今回、『晩酌気分を味わえるようになって嬉しいです』という声がSNSを中心に挙がるようになったんです。
今後もお酒好きがノンアルコールで食事中や晩酌で前向きに楽しむ“ノンアルコールで晩酌する”という文化を創り、ひいてはお酒を取り巻く環境全体を明るくできるよう尽力していきたいです」
ノンアルコール飲料に対するイメージが変われば、お酒のように様々な切り口の商品が出てくるのではないだろうか。
<取材・文・撮影/古田島大介 編集/詠祐真>