アイリスオーヤマ、初のノートPCがSNSで酷評 「貧弱なストレージ」になった意外な理由
文科省の作成した資料の問題点
とはいえ、「メモリ4GB」のWindows PCが過去に大きく売り上げてきたのは事実であり、この内容ならば中古市場でも容易に調達できる。費用面を重視して、「子どもが使うパソコンの最低基準」を明確にしたのならば辻褄が合う。
教育コンテンツ(ソフトウェア)の製作者に向けて提示する「標準性能」としては、極めて妥当なのである。もし仮に、最高レベルのゲーミングパソコンでしか動作しないようなソフトを「全国の小学生へ」と売り込まれても、教育現場は困るわけだ。
逆に、教育用パソコンを組み立てるハードウェアメーカーが、この控えめな仕様を目標とするようでは問題だ。時代遅れのハードが現場にあふれると、ソフトの世代交代が難しくなる。アイリスオーヤマのLUCA Note PCは、まさしくそのような製品になってしまった。ちなみにソフトウェアの世界では「推奨性能」と「最低動作性能」というふうに、2つの基準を使い分けるのが普通だ。IT教育の未来のためにも、文科省には文言に配慮をお願いしたい。
5万5000円をポンと出せるか?
SNSで最新デジタルについてつぶやいている人たちは忘れがちだが、実際のところ、IT機器に毎年何万円もかけられる家庭はそう多くない。1990年代を思い出してみても、2万円や3万円のスーパーファミコンやプレイステーションは高級品で、購入後3年くらいは王様のように居座っていた。子ども部屋にパソコンがあった世帯なんて一握りだ。
しかも悲惨なことに、現代の日本人の可処分所得は、その’90年代を下回っているのである。だから「教育のため」とはいえ、10万円クラスのノートパソコンは、今も昔も“安い買い物”ではない。
さらに言えば、現代の子どもはパソコンやゲーム機よりも先にスマホを欲しがるようになっている。若年層にとっての「総合的な情報の入り口」は、もはやパソコンではなくスマホなのだ。
そう考えると、LUCA Note PCの「税込5万円台」という値段設定には、ひと昔前である2000年代ほどの割安感は感じられない。もっともこれはあくまで定価であり、実売価格はもうすこし安くなるだろうが。