明星食品、高級袋麺ブームの火付け役「中華三昧」を生んだ1本のCM
コロナ禍で「節約志向」と「プチ贅沢」
2020年にはコロナ禍によるステイホームやテレワークで改めて、自炊が注目されており、カップ麺が優勢だった即席麺市場の構図も、袋麺人気が再燃の兆しを見せている。
「袋麺は去年の緊急事態宣言以降、しばらく供給が追いつかなくなるくらい絶好調でした。これは他社も変わらないと思います。コロナ前の時代は簡便性や時短が求められていたので、オフィスで手軽に昼食を済ませたい時はカップ麺が最適でした。
これが、テレワークでオフィスに行かなくなったことで、カップ麺を買わなくなった。家にいる時間が増えたことで、自分の好みに合わせて調理できる袋麺が見直されたんですね。今後しばらくは『節約志向』と『プチ贅沢』の二極化が進むと考えています」
こうした中、中華三昧はコロナ禍で生まれたプチ贅沢消費の需要に応えるため、2021年1月から数量限定で『中華三昧 贅の極み』を発売。オンライン限定での販売となったが、予想以上の反響で即完売となった。八木氏は「昔の成功の原体験を生かしつつ、今の時代に合わせたかった」とし、同商品を開発した背景についてこう語る。
即席ラーメン業界史上最高の5000円
「1987年に発売した『新中華三昧 特別仕様』は、フカヒレやアワビなどの高級食材をレトルト具材に使用した『1000円ラーメン』として打ち出し、百貨店中心の限定販売だったことや1000円という当時の常識を超えたプライシングが多く話題を呼ぶことに成功しました。2020年に明星食品の創立70周年を迎えたこともあり、ちょうど記念になることをやろうと画策していたんですが、そこで肝になるのがプライシングだと考えました」
当時に比べ、現在のラーメンの値段は地味に上がっているという。安いラーメン店もある一方、都内ではラーメン1杯700~800円が相場で、トッピングも加えると1000円を超えるのが当たり前になってきている。
「今の時代にお客様から『すごい値段だね』と驚いてもらうラーメンの値段ってどの程度なのか。高すぎず、安すぎないプライシングを考えるのに苦労しました。結果として2食セットで5000円という値段に落ち着き、会社初のオンライン限定で発売しました。会社のアニバーサリーを機に、採算度外視で出したのは、もう一度、『本気で中華三昧が美味しいものを作っていること』をアピールしたかった狙いがあります」