コロナ禍で急増「社交不安症」。人前で震えが止まらない元お笑い芸人も
時代の変化が若者をあがり症に
日常生活を送ることがままならない状況下にいるSAD患者たち。患者数は年々増えているという。「なんば・ながたメンタルクリニック」院長の永田利彦氏は理由をこう分析する。
「昨今の若手社員は、平成以前と比べると周りから意見を求められる機会が増えている。そのため自己主張のできない人やコミュニケーションが苦手な人が、周りと比較されることによって気負けし、SADを発症しやすくなっている」
一方で永田氏は「SADと同じ症状でもパニック障害や重度の精神障害など、別の病気の可能性も考えられるので適切な治療を受けるべき」と警鐘を鳴らす。長引くコロナ禍で、今後もSAD患者は増え続けるのだろうか。
「コロナ感染や生活面での不安がある限り、患者は増えるはず。通常、SADは思春期の若者が発症する病気ですが、20代を超えても20%程度は発症する。働き盛かりのサラリーマンが突然発症するケースもあるんです」(松井氏)
あがり症は病気――。少しでも異変を感じたら、取り返しがつかなくなる前にまずは医師に相談することを念頭に置きたい。
脳が安心する言葉のマネジメントとは?
「脳が安心すればあがらない」と独自の理論を展開するのは、あがり症と話し方の専門家の新田祥子氏。あがりの原因を“脳のメカニズム”の問題と捉え、人間科学とコミュニケーション学に基づく独自のメソッドを展開する。
「あがりは自尊心が傷ついて起こるさまざまな身体症状が集合した状態。背景には交感神経の活性化や筋肉の収縮という身体内部の問題があります」
また新田氏は、あがり症は私的自意識が芽生える思春期に発症しやすいと話す。
「中学2年生の頃に大人に近い脳になるため、自意識がとても複雑になります。他人にどう見られているかや他人に映る自分の姿に敏感な年頃で、本読みで声が震えただけで深く傷つき、それ以来、人前はダメという人はとても多いです」