柚子塩らーめん「AFURI」、赤字続きのコロナ下で見つけた脱出の糸口
こってり系のとんこつから、さっぱり系の塩、あっさり系の醤油など、いまや街中にはさまざまな系統のらーめん屋が点在するようになった。そんななか、神奈川県の阿夫利山から生まれた「AFURI(阿夫利)」は、“柚子塩らーめん”という看板商品の元、女性に愛されるらーめん店として人気を博している。
今回は同店を運営するAFURI株式会社 常務取締役の平田展崇氏に、AFURIが女性を中心に支持されるらーめん店に成長した理由や今後の展開について話を聞いた。
女性ウケを狙ったわけではなかった
2001年に1号店をオープン以来、AFURIは国内外合わせて25店舗を出店。商業施設内のテナント店舗のほか、都内では恵比寿、原宿、中目黒、三軒茶屋、麻布十番など感度の高い街に店を構えている。
淡麗・さっぱり系らーめんを主軸に、男性のほか女性にも支持されているらーめん店として評判を得ている。その理由について平田氏に聞いたところ、「女性ウケを狙ったというわけではない」と意外な回答が返ってきた。
「『女性をターゲットにしたらーめん』とよく聞かれるんですが、実はそういう意図は特にありませんでした。当社代表の中村(比呂人)が、女性的な“感覚”を持ち合わせているようで、自身の琴線に触れる空間や心躍る体験などの感性を大事にしています。その中村が好む、味や空間、おもてなしなどを体現し続けた結果、自然とこのようになった。というのが本当のところです」
尖りすぎず、誰もが親しめる味に
ひと昔のらーめん屋といえば「腕組み、ヒゲ、職人気質」で、どこか話しかけづらく、独特の雰囲気を醸し出していた。しかし、平田氏は「らーめんは世界に誇る日本の食文化。もっと広く愛される存在になれるはずと常々思っていた」と話す。
「老若男女問、そして国籍も問わずに、美味しいと感じてもらうために。あえてエッジを効かせすぎず、まず見た目、続いて香り、そして旨味と食感で楽しめる構成が肝要と考えました。その結果生まれたのが、旨味と香りたっぷりの和出汁に、和のフレーバーの代表格でもある“柚子”を合わせた味です」
和の食材に着目したのは、AFURI代表の中村氏が幼い頃に、料理上手な母親から食育の一環で自然の食材を使った料理を出してもらっていたことに端を発する。
「酢橘(すだち)や臭橙(かぼす)ではなく、なぜ柚子にしたのかというと、『誰もが知っていて、誰もが親しめる食材』だったのが大きい。海外でも『YUZU』で通じるところが多いです。近年では、フランス料理などでも広く使われるようになってきています。ワールドワイドに受け入れられる柚子を使用すれば、日本のみならず国境を越えても愛されるらーめんになると考えています」