米大統領選の陰謀論、ハマる理由は「優越感」。ダースレイダーが解説
陰謀論は、人間の直感や嘘を信じる力を利用する
僕は小さいころにロンドンに住んでいたんですが、イギリスの人に話を聞くと「日本人は生で魚を食うなんておかしい」「地べたにあぐらをかいて座るのはおかしい、なんで椅子を使わないんだ」と違和感を抱くわけです。
西洋文化に馴染んでいる人からすれば、これは直感的・本能的におかしいと思う現象です。日本人からすれば日常的なことですが。
逆に僕がロンドンに行ったときにすごく違和感があったことは、靴を履いたまま家に入り、ベッドにも靴を履いたままあがるということ。「え、靴を履いたままベッドにあがるなんておかしいだろ」「なんか気持ち悪い、汚い」と。これは直感です。でも、それは日本では靴を玄関で脱ぐという文化で育っているからですよね。だから直感的・本能的にという言葉を使うと、それは生物としてもともと持っていたアンテナのように誤解してしまいますが、それは教育環境や育った環境に依存します。つまり「直感こそが正しいんだ」という言説には、前提となる価値判断があるんじゃないかということを考える必要があります。
本来人間が陥りやすい認知の構造。つまり物語だと思い込んだり、正解があると思い込んだり、嘘を信じたり、直感を信じたりという人間の在り方というものが、非常に巧みに利用されてしまうのが陰謀論です。これを意図的に広げている人もいるから、僕はたちが悪いと思っています。
アメリカ大統領選における陰謀論
アメリカ大統領選における陰謀論に「ピザゲート」があります。
2016年のドナルド・トランプ VS ヒラリー・クリントンの大統領選のときに、ロシアがサイバー攻撃をアメリカに大量に仕掛けたという、証拠のある事実があります。
その頃に、民主党のヒラリー陣営の関係者がピザ店の中で児童人身売買をしているという情報が流され、これが瞬く間に広がった(ちなみに児童買春というテーマは「なんでも市場で売られてしまう」という資本主義の暴走に対しての不安を表しているとの指摘もあり、その意味で違和感を覚える点までは正しいとも言えます)。
今はそういったサイバー攻撃に対する規制が強くなったんですが、2016年の大統領選にはそれが大きな影響を与えたと言われています。
生活にプレッシャーやストレスを感じているとき、そうやって流布された情報は、それが自分の違和感の答えなんじゃないかと思わせてくれる。トランプが4年間アメリカの大統領を務めた間に、さまざまな言説がどんどんネットに投下されていきました。そうすると「ほら! これにはこういう答えがあった!」「ほら!やはりこれが繋がっていた」といったように「ほら!」が連続していきます。
ちなみに、「ほら」というのは嘘という意味の「法螺(ほら)」とかけているのでたちが悪いんですけど。これが2020年大統領選で顕在化し、さらにトランプに投票した約7000万人のうち結構な割合が信じ込めるレベルまで達してしまったのです。
⇛次回<現在も「地球平面説」を信じる人は多い。陰謀論が危うい理由をダースレイダーが語る>に続く。
<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>