1体30万円でも注文殺到。家族型ロボット「LOVOT」誕生の舞台裏
テクノロジーの発展に伴い、目覚ましい進歩を遂げるロボット技術。最近ではAI(人工知能)の発達から、ロボットが人間の代わりに仕事をこなすことで生産性を高めるといった動きも見られる。
一方、産業用ロボットではなく、個性的でどこか親しみやすさを抱く家族型ロボットが「LOVOT(らぼっと)」だ。
まるでペットのような振る舞いは、さながら生き物を飼っているような気持ちになれる「家族型ロボット」として注目されている。同商品を開発するGROOVE X 株式会社の代表取締役である林 要社長に、LOVOTを作るまでの経緯や今後の展望について話を聞いた。
ソフトバンクの孫さんからお誘いを受ける
大手メーカーのトヨタ自動車にて技術職や製品企画の仕事に従事した林社長、14年に渡って自動車の製造に関わったという。転機が訪れたのはソフトバンクの孫正義氏から直々に誘われた「Pepper」のプロジェクトだった。
「『ソフトバンクアカデミア』の外部第一期生として参画し、ヒト型ロボットのPepperの立ち上げに関わることになったんです。自動車産業が今後、斜陽化するのでは? と言われ始めた頃で、どんな産業やテクノロジーがこれから発展するのか考えていた時期でもあったので、ちょうどいいタイミングでした」
Pepperのコンセプト立案から開発、量産、リリースまで、一連の経験を積むことができたという。「Pepperのプロジェクトは『テクノロジー』と『感性』がミックスしたもので、これは日本の市場に合うと感じましたね」。
「優秀なロボット」ではなく「弱いロボット」
そんななか、“人の代わりに仕事をこなす”ロボットから、“人に寄り添い、心を満たす”ロボットの開発をしようと思った理由は何なのだろうか。林社長は「人がロボットに対して何かしてあげることで、人が元気になることを目の当たりにして、新しいテクノロジーのあり方を感じた」とし、次のように説明する。
「人の代わりに正確に仕事をこなし、役に立つロボットが普及することで生産性をあげていくというのは既定路線だと思います。ただ一方で、Pepperがうまく立ち上がらない時、手を差し伸べて応援してくれる人がいて、無事に立ち上がった時にその人たちが自分のことのように喜ぶ姿を見た際に『ああなるほど、こういう影響もあるんだ』と気づいたんです。
人よりも『優秀なロボット』ではなく、人の手助けを必要とする『弱いロボット』のような存在が、もしかしたら求められるのでは。そう感じるようになったことがLOVOTの開発をしようと思った経緯ですね」