敏感すぎて疲れる「繊細さん」。“繊細度”を測る10つの質問
今、「繊細さん」と呼ばれる人を扱った関連本が売れている。長年、多くの日本人が繊細さから生きづらさを感じていた原因が「HSP」(※)という気質だと判明したのだ。必死に折り合いをつけて生きる繊細すぎる人々の事情に迫る。また、HSP臨床医の長沼睦雄氏と精神科医の西脇俊二氏にその特徴について伺った。
※HSP(Highly Sensitive Person)…「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略。感覚から得た情報を処理する神経が敏感で、刺激や他人の感情に過敏に反応する特性を持つ人を指す言葉として話題に。’96年、アメリカの心理学者、エイレン・N・アーロン氏が提唱したことで認知された。
仕事や人間関係に支障をきたす人も
「相手からメールの返信がないだけで『相手を怒らせてしまったかな』『何かのミスでメールが届いていないんじゃないか』と焦り、ほかの仕事に手がつけられなくなる。対人関係でも『あの人は今、話しかけられたくないのかも』などと相手に気を使いすぎて、いつもスムーズなコミュニケーションが取れません。その影響で職場ではコミュ障扱いされることがしばしば。いろんなことを深く考え込んでしまうので仕事も時間がかかって、疲れちゃうんですよね」
長年、繊細すぎるがゆえに生きづらさを感じてきた高梨泰樹さん(仮名・40歳)。幼少期からこうした性格を理解してくれる人はほぼおらず、母親から「あなたはおかしい。考えていることがわからない」と言い放たれたことも。「自分は欠陥人間だと思いながら生きてきた」という彼がHSPについて知ったのは1年前だった。
「芸人の田村淳さんがHSPだと公表したニュースを見て、すぐにネットで簡易診断テストを受けると、ほぼ全項目に当てはまりました。『あぁ、そういうことか』と長年解けなかったなぞなぞの答えを教えてもらったようで妙にスッキリしたことを覚えています」
感覚から得た情報を処理する神経が過敏な人
近年、高梨さんのように“繊細すぎるがゆえの生きづらさ”を訴える人が増えている。その発端となっているのが「HSP」という概念。芸能人の公表や関連書籍のヒットにより注目度が高まり、これまで可視化されてこなかった生きづらさを抱えた人々の存在も注目されるようになった。「繊細すぎる」「過敏すぎる」とも評されるHSPとは、どのようなものか。
4年前にHSPに悩む人のカウンセリングを行う目的でクリニックを立ち上げた十勝むつみのクリニック院長の長沼睦雄氏は、こう語る。
「端的に言うと、感覚から得た情報を処理する神経が過敏な人を指す言葉です。他人の言動や感情、または音やにおい、光など五感への刺激に強く反応してしまい、ストレスを感じたり感情が高ぶったりしやすい傾向があります」
現在、長沼氏のもとには全国から相談が殺到。新規の受け付けをストップしているほどだという。
「HSPは病気や障害ではありません。そのため医師から診断が下されるものではなく、あくまでも個人の“生まれもった気質”とされています。こうした気質を持つのは5人に1人ともいわれ、深く考え込む特性があるために『仕事が遅い』となじられたり、相手の発言にとっさに反論できず一方的に責め立てられてしまったり、共感力の高さゆえに人と一緒にいると相手に合わせようとしすぎてグッタリと疲れてしまうといった当事者の声をよく聞きます。今、漠然と抱えている生きづらさの原因がHSPにある人は少なくありません」