ANAは過去最大5100億円の赤字。航空、鉄道業界で働く人の本音は?
就活生や転職者が「この会社・業界ってどうだろう?」と思った時、強い味方になるのが「口コミサイト」です。昨今では、現役社員やOBが体験談を投稿できる口コミサイトが多数登場していますが、ネットの情報だけで、どこまで企業・業界のことがわかるのでしょうか?
10月27日、今期(2021年3月期)の純損益が過去最大の5100億円赤字だという見通しを明らかにした航空大手ANAホールディングスをはじめ、新型コロナウイルスの影響で国・地域間の移動が抑制され、「航空、鉄道、運輸、倉庫業界」は苦境に陥っています。今回、就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」(オープンワーク株式会社)のデータをもとに、これらの主力企業の特徴を比較していきます。
「チャート形式」で複数企業を比較
まず、今回のテーマである「航空、鉄道、運輸、倉庫」で絞り込みを行います。
「航空、鉄道、運輸、倉庫」業界については同カテゴリの企業が6,425社あり、すべてを紹介するのは難しいため、総合評価ランキング上位に絞ってご紹介します。結果、上位9社は下記の通りでした(※順位・評価・ランキング画像は記事作成時の2020年10月8日時点のスコアを使用、また業界9社の口コミ合計は約6400件。ただし1人で複数項目の書き込みをするため口コミ数=人数ではない以下同)。
【総合評価ランキング】
1位:日本郵船株式会社(評価4.17)
2位:日本トランスオーシャン航空株式会社(評価4.10)
3位:株式会社エアージャパン(評価3.82)
4位:株式会社商船三井(評価3.80)
5位:阪神電気鉄道株式会社(評価3.79)
6位:フェデラルエクスプレスジャパン合同会社(評価3.79)
7位:キャセイパシフィック航空株式会社(評価3.79)
8位:日本貨物航空株式会社(評価3.75)
9位:エミレーツ航空会社(評価3.67)
「航空、鉄道、運輸、倉庫業界」ランキングでは上位9社に国内外の航空会社、鉄道・運輸会社が並びました。また、平均評価が4を超えている企業が2社あり、働いている人からの評価が高いことが伺えます。この点を踏まえて、「上位9社で評価が共通している項目」「会社ごとに評価が異なる項目」を確認します。
まず、上位企業で評価が共通している項目はありませんでした。各社、バラエティ豊かなチャート形状となっています。これが示すのは「業界内で共通する特性があまりない」ということです。したがって、前回と同様、共通している項目の代わりに、評価が異なる項目を2軸分掘り下げることにしました。
航空、鉄道、運輸、倉庫「法令順守意識」ランキング
まずは「法令順守意識」について、スコアが高い順に企業を並び替えます。
【「法令順守意識」ランキング】
1位:東海旅客鉄道株式会社(JR東海)
2位:住商グローバル・ロジスティクス株式会社
3位:東急株式会社
4位:西日本鉄道株式会社
5位:株式会社JALスカイ大阪
6位:三菱商事ロジスティクス株式会社
7位:東急電鉄株式会社
8位:西武鉄道株式会社
9位:小田急電鉄株式会社
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39位:日本郵船株式会社
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309位:エミレーツ航空
顔ぶれが変わり、国内の鉄道会社・商社のグループ企業が上位に並びました。総合ランキング上位の企業がランキング上位に1社も存在していません。
また、総合ランキングで上位だった企業は「法令順守意識」ランキングでは順位を落としており、日本郵船株式会社(総合ランキング1位)は39位、エミレーツ航空(同9位)は309位でした。OpenWorkの仕様上、各軸のスコアが3以上の企業のみランキングされているため、順位がついている=スコアが3以上であることを示しています。
イメージがつかみやすいよう、「法令順守意識」観点で評価が高い企業のコメントと、総合ランキング上位の中で「法令順守意識」観点が低めの企業のコメントをご紹介します。
【平均評価が高い:JR東海社員のコメント】
人事・管理部門があらゆる意味で強い。法令遵守や不祥事対応は迅速かつ的確。特に人事部のセクハラ防止に対する姿勢は本気を感じる(本社、総合職、課長、在籍15~20年、男性)
【平均評価が低い:エミレーツ航空社員の口コミ】
「入社理由の妥当性」と「認識しておくべき事」:ドバイをベースにするということ。自分の身は自分で守るしかないこと。日本から遠いということ。航空業界は経済・政治の影響を受けやすいことを理解するべきだと思った(客室乗務員、在籍5~10年、女性)
航空、鉄道、運輸、倉庫業界において興味深かったのは、必ずしも「法令順守意識スコアが高い=大企業」というわけではない点です。航空会社と鉄道会社を比較すると、コンプライアンス意識がより高いのは鉄道会社であるという傾向が伺えました。
また、エミレーツ航空の場合は、ドバイを拠点にして勤務する関係上、日本とは異なる文化に馴染めるかが鍵です。海外エアライン勤務を希望する場合はその点を考慮する必要があるでしょう。