『カネ恋』最終話が描いた、ぽっかり空いた穴を愛するということ
慶太の不在が存在を物語る
父親の娘への愛の結果による許されない過ちも、それを想像だにしていなかった玲子の無邪気な欲望も、誰にでもほころびがあると伝える『カネ恋』。思えばこれまでの3話で描かれてきたのもそのほころびを巡る物語で、板垣純(北村匠海)、早乙女を中心として彼らに宿る人間らしさを精緻にまなざしてきたドラマだった。
そして玲子とは正反対の慶太も、金銭感覚の崩壊ぶりなどまさしくほころびが気になってしまう人。最終話では序盤から姿を消し、彼の不在がことさらに存在を際立たせる。ムードメーカーがいなくなってシンと静まり返るオフィス、子どものころから考えつづけていたおもちゃの企画案を両親が眺める姿、猿彦を大事に抱きしめながら慶太の笑顔を思い浮かべる玲子。
……誰にでもほころびはあって、でもだからこそ愛おしさも垣間見える。
ぽっかりと空いた穴を愛すること
第1話で(慶太に買われ)失ってしまった豆皿が、慶太が思いを込めてつくった豆皿になって玲子のもとに届く。その「ぽっかり空いた穴」と「代わりに埋めてくれる存在」。
そこに書かれた黄色い猿も、父親からもらったおもちゃから猿彦、豆皿まで、いろんな場面で玲子の空虚な心を支えてきたものだっただろう。そうして人生は円環のなかで続いていく。
『カネ恋』最終話のラストシーン、玲子の瞳の先に映っていた光景はどんなものだったのだろうか。失ってしまった悲しみを乗り越える笑顔だったのか、つかの間の再会を喜ぶ表情だったのか。
どちらにせよ、私たちの心には三浦春馬さんという偉大な役者と、彼が演じた猿渡慶太の存在が強く刻み込まれている。だからいまは、ぽっかり空いてしまった穴をまずは愛することからはじめたい。
<TEXT/原航平>
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