ナチス優生思想に殺された叔母を持つ「世界的な画家」の驚きの半生
「私たちは人生のヒーローになる必要がある」
――そもそも映画の役割とは何だと思いますか?
ドナースマルク監督: 私達は自分の「物語」のヒーローになる必要があると思うんですよ。というのも、現実には人生が悪い方向へ向かっていたり、ハッピーエンディングにならないときもありますよね。そんなときこそ、自分自身の「物語」を紡ぐために映画があるんじゃないでしょうか?
なぜ、私たちの多くが精神科医を必要としているんでしょう? 自分の悩みを精神科医に伝えると、精神科医は「なるほど、だったらこれを試してみたら?」と私たち自身が、自分の人生の主役になれるように「物語」を再建する手助けをしてくれますよね。そうでないと納得のいく人生を送れない。ラブストーリー、自己探求、哀しみと喪失……こういったものは基本的な人生の要素であり、文化を越えた普遍的な「物語」です。
今は国と国の間で人が動くことが止まってしまいましたが、普遍的な物語を語る映画には「世界をつなぐ橋渡し」の役割があると思う。コロナ収束後は、こういった映画が国境を越えて旅することを望んでいます。ちなみに、私の息子たちは日本の文化が大好きなので、コロナ収束後は彼らと一緒に日本に行き、日本の人々や文化に直に触れ合うのを楽しみにしています。
<取材・文/此花わか>