安倍政権が残した“負の遺産”を検証。森友・加計、桜、公文書改ざん<ダースレイダー>
「歴史が判断」と「再調査しない」の矛盾
前段で話した「歴史が判断する」というときに、その判断材料が書き換えられていたら、正確な検証ができるでしょうか。歴史が判断するという態度を取るには、判断材料がすべて正確に残っているということが前提となります。
「いまだに森友のこと言っているのか」と言う人が多いけど、いまだに何も説明できていないし、一度書き換えられてしまった。一度歴史の判断材料を書き換えてしまった政権は、その時点で任を降りるべき。
僕は、安保法制を通した時点で安倍政権は、内容の評価はさておき大きな仕事をしているので、そこで「お疲れさま」で良かったと思います。
森友事件では、公文書改ざんに直接関わった財務省職員の赤木俊夫さんが自殺します。そして亡くなったあと、2020年に手記が発表されます。そこには上層部からの具体的な指示内容や、本人の気持ちが込められていました。それに基づいて、8億円値引きが何だったのか、ちゃんと調べたほうがいいのではないか。
これに対し、再調査はしないというのが安倍さんと、財務大臣の麻生太郎さんの判断です。この態度は歴史に委ねるという態度と矛盾することになります。
加計学園、桜を見る会の問題とは
次に、ほぼ同時期に問題になった加計学園とは何だったのか。安倍さんの大親友である加計孝太郎さんが運営する学園が、本当に必要か疑問符があった上に、他の大学も候補に挙がっていたのに、戦略特区という形で獣医学部を作る方向に至った。ただ、この決定経路は説明されず、ブラックボックスに包まれている。
さらに言えば、加計学園の客員教授で安倍さんの腹心と言われている政治家が何人か関わっている。「だからと言って怪しく思うな」という声もありますが、逆にそういった立場であるからこそ正しく、明確に加計学園が獣医学部を開くべきであるという説明をすることは要求されて然るべきだし、それこそが、何度も言いますが、歴史が判断することに繋がると思います。
2019年には桜を見る会の予算の大幅な超過や、招待基準の不透明さが問題になりました。また、今回新総理となった菅義偉さんが反社会的人物とツーショットを撮っていたことも話題になりました。これもあやふやな説明しかされていません。国家の要人が集まる場に、どうやって入り込んだかわからない人物がいるというセキュリティーの甘さ。これも歴史が判断するという視座に立ったときに、大丈夫なのかと。
あるいは巨額の詐欺事件を起こした関係者がどうも出席していて、さらに言えば桜を見る会に参加した事実をもって顧客に商売をしていたと。どうやって入り込んだのか、そのプロセスを説明する招待者名簿なるものが各省庁に残されているのにも関わらず、廃棄されていると主張した。つまり、のちの判断材料にされるものは提供できないと。これは森友事件、加計事件も一緒です。
安倍政権の最大の特徴は「検証できないこと」
過去の労働に関する決定を検証するとします。例えば安倍政権であれば、働き方改革や裁量労働制など労働に関する政策を実行しているけど、その是非を後世が検証する際、背景となる当時の社会状況はどうだったのか、勤労統計を確認する必要があります。
しかし、その調査で長期にわたって不正が行われていたことが、2018年末に発覚しました。この時点ですでに、歴史が安倍政権のレガシーなるものを正しく判断することができなくなっている。
さらにその後、2020年にはコロナ禍に全世界が巻き込まれていく。大型のパンデミックを引き起こす感染症が地球上に現れては人間社会を脅かす……ということが繰り返されているなか、2020年に日本社会はコロナにどう立ち向かったのか。これを後世の人がどう評価するのか。そのための専門家会議の議事録が残されていないという。誰がしゃべったのか、概要しか残っていない。また専門家会議のメンバーの選定過程も明らかにされていない。
そして、そのあと分科会という形に変わった。その変わった経緯も分からない。これでは、将来また未知の感染症が来たときに、コロナの時の対策を調べてみようとなってもできません。この、検証することができないという形を作ったのが、安倍政権の最大の特徴のひとつです。
<構成/鴨居理子 撮影/山口康仁>