安倍政権が残した“負の遺産”を検証。森友・加計、桜、公文書改ざん<ダースレイダー>
東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)。この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。
2012年12月に発足した第二次安倍政権が、歴代最長となる7年8か月で幕を閉じ、新総理に前官房長官・菅義偉氏が就任した。森友学園や加計学園の問題、公文書改ざんなどさまざまなスキャンダルを起こしながらも維持された、この安倍政権とは何だったのか? ダースレイダーが2回にわたり検証する。
病気になったら休んでいい社会であるべき
僕は2010年、33歳のときに脳梗塞を発症した病人なので、基本的なスタンスとしては病気で人を揶揄することには反対の立場です。なので、肝心なときに病気になることを含めて、病気というのは誰のところにどんなタイミングで来るか分からない。
これは、コロナ禍で改めてみんなが気付くことだったとも思う。そして同じ病気を患ったとしても感じ方は人それぞれで「何をもってしんどいと感じるか」「どこがツラいのか」はケースバイケースで、その人がどう病気に向き合っていくかに尽きます。
一方で「病気だから許してやれ」「病気だからそれまでやったことの責任が無くなる」「病気だから全てなかったことにする」というのは、病人に対してのステレオタイプ、偏見に繋がる見方だと思う。病気だからとバカにしたり、揶揄するのと同じ理由で、良くない矢印の向きが変わっただけなので。
体調が悪かったらすぐに休んでいい社会であるべきと思う。ただし、役職によっては、機能しなくなった途端に非常に多くの人に影響がいってしまうものもある。そういう人が病気になった場合、どうするかということも、このタイミングで考えたほうがいいと思います。
総理大臣の“臨時代理”を置くべきだった
僕はとにかくいろいろな人が国会議員になって、国民を代表する立場として国会で侃々諤々(かんかんがくがく)、議論する必要があると思っています。日本にはいろんな人が住んでいて、国会議員はその声を代表する人だからです。
さまざまな声が議論される国会で、決まったことを実行していくのが行政の仕事で、その行政のトップに立つのが総理大臣です。総理大臣は一人しかいない。安倍さんの病気が悪化し、辞任することを受けて考えるとするならば、体調が悪い人は休んで治療に専念すればいいし、回復したら改めて取り組むべきものには取り組む。
もし本人が取り組めないなら、他の人が取り組む。こういった体制作りは常に考えておく必要があります。病気はいついつ罹るか分からない。このことを最初に言っておきたいと思います。安倍さんも体調が悪いなら、ちゃんと休みを取っていただきたいと思います。
ただ、安倍さんは辞任を表明した後も、次の自民党総裁が決まるまで、臨時の代理を置きませんでした。これは先ほど言ったように、休んで代わりの人がやる体制を作ったほうがいいということに矛盾してしまいます。総理を続けることができないのであれば、休んで周りの人に任せたほうがいいと思うんですけど。
「総理大臣という役職が機能しないのはまずいから急いで選ぶ」というロジックはすごくおかしいなと思います。臨時を置いてじっくり総裁を選ぶ選挙をやればよかったのに、なぜそれをやらなかったんだろうと。実は、こうしたあり方が安倍政権の7年8か月間、ずっと続いていたと思っています。