累計1000万部のヒットメーカー編集者が思う「仕事の本質」
二番煎じ、三番煎じは売れない
――最近の売れている本の傾向から、どんなものが世の中で求められていると思いますか?
柿内:マーケットが縮小して、本を買う人と買わない人の差がはっきりしています。買っている人はよく本を読んでいる人なので、本質的・普遍的な内容だったり、情報の量と質が高いものが求められたりしています。本としてより“いい本”が売れる時代になってきていると感じます。
逆にそういうものじゃないと、わざわざ買う必要性がないわけです。どっかにあるような、二番煎じ三番煎じはかなり厳しい。昔は、それなりに売れていたんですが、いまはそういう時代ではない。やっぱり新しい価値をどう提示できるかが重要だと思います。
――とはいえ、新しいものを生み出そうとしても、会社で企画が通るのは売れている本の二番煎じだったりすることもあるかと思います。柿内さんは社内会議でどのように進めているんですか?
柿内:ひとつは、二番煎じ、三番煎じは売れないということを言い続けるようにしています。自分たちが見ているのは、買っていただくお客さんの心の中。そこにバシッと届いたときに企画がうまくいく。二番煎じ、三番煎じが届くという理由がまったくないんです。
だから、類書のデータなどはあまり重視していません。市場調査とか、読んでいただく人の心の中に探るためのデータは大いに参照しますが、売れているものをただ真似ようということのためにデータを参照することはありません。
柿内さんが思う「編集者の仕事の本質」
――個人がコンテンツを作ってダイレクトに消費者に届けられる時代となり、「編集者不要論」なんかも出てきています。柿内さんにとって、編集者の仕事の本質ってなんだと思われますか?
柿内:素材を見つけて、価値をつけて、その価値を届けるっていうのが編集者の仕事だと思うんですよ。編集者の持っている能力は、コンテンツ以外の領域でも役に立つと思っています、世の中にはいろいろなモノやサービスがありますが、うまく価値がつけられていないものや、その価値が届いていないもので溢れかえっています。
そういったものに価値をつけて、価値を届けるお手伝いというのが、実は編集者はめちゃくちゃ得意なんですよね。僕自身もそういった仕事をやらせてもらっていて、編集という仕事の可能性を大いに感じています
――なるほど。コンサルに近いイメージでしょうか?
柿内:近いと思います。編集者は特にクリエイティブな価値をつけることが得意です。言語化したり、ストーリーをつくっていくことが、編集者ならできる。編集者の仕事は圧倒的に広がっている時代だと思います。
<取材・文・撮影/ツマミ具依>