パッとしない5G規格の現在地。5Gスマホはなぜ普及しないのか
iPhone対応からが本番か
5G対応のスマートフォンもぽつぽつ出始めているが、OSはすべてAndroidで、国内で人気の高いiPhoneはまだラインナップされていない。高速通信の対応エリアがほとんどないのだから、5Gスマホの売れ行きが芳しくないのも仕方ないところである。
そのiPhoneはといえば、今秋のモデルチェンジで5Gに対応することが期待されている。日本における5G整備も、この新型iPhone登場を受けて本格化すると見て間違いないだろう(先駆けているメーカーは少し気の毒だが)。
今秋に向けて各社とも設備投資を急ぎたいところだが、コロナの影響で外出控えが進んでいる現在は、携帯回線よりも固定回線が有利な状況となっている。恨んでも仕方ないが、ちぐはぐな形で5G時代を迎えることになってしまった。
また、今秋のiPhoneが5Gに非対応であったり、あるいはリリース時期が遅れる場合も、見込みは大きく狂う。Appleの製品開発次第では、携帯回線の5G化がスローペースになる可能性もありそうだ。
5Gで固定回線はどうなる
ところで、5G化によって予想されている社会変化のひとつに、若い世代の“固定回線離れ”の加速が挙げられる。
過去5年間、高速回線である4G/LTEが普及するにつれ、自宅にISP(インターネット・サービス・プロバイダ)の固定回線を契約しない人が増えた。特に一人暮らしの若い世帯では、携帯料金とISP料金の“W払い”は避けたいところで、いたって合理的な判断である。
より高速な5Gモバイルの普及はこの傾向に拍車をかけると予測されているが、これと相反するトレンドもある。いわゆる「IoT家電」がそれだ。自宅のテレビの録画番組に出先からアクセスできたり、ペットの様子をカメラで確認できたりするIoT家電は便利だが、自宅に固定回線とLANがあるのが大前提である。
したがって、これまでと変わらない形で5Gによる固定回線の代替が進むとすると、自宅での常時接続が必要なIoT家電は“贅沢品”となり、普及を妨げられることになってしまう。IoT家電は開発が進んでいる最中であり、これはもったいないことだ。
5G回線が固定回線を完全に代替できるほどのポテンシャルを秘めているのなら、1契約に複数端末を紐つける場合の料金をどれだけ安くできるかが勝負の分かれ目と言えるだろう。自宅の5Gと携帯の5G(ともに使い放題)を合算した月額が6000〜8000円くらいになれば、固定回線しか提供できない既存のISPは太刀打ちできなくなる。しかし、携帯各社がそこまでの値下げに踏み切るかは疑問である。