日本でもTikTokが禁止に?本当に“中華製スパイアプリ”なのか
若者の間で流行しているスマホアプリに「TikTok(ティックトック)」がある。15秒から1分程度の短い動画を撮影しシェアできるSNSで、10代女子を中心に支持されている。
分類としてはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に当てはまるが、TwitterやFacebookのように、言葉を交わす場所ではない。TikTokはあくまで「動画を投稿する」ためのサービスである。
ところがいま、「子供の戯れ」以外の何物でもないTikTokが、国際政治の荒波にもまれている。ここではその背景を解説するとともに、今後を占っていきたい。
日米で“TikTok排除”の兆し
各紙が7月28日に報じたところによると、自民党内の「ルール形成戦略議員連盟」という会が、TikTokの使用制限を求める提言をまとめる方針であるという。
TikTokは中国のIT会社ByteDance社が開発し、運営している。したがって規制派は、「TikTokを通じて利用者の個人情報が中国政府に渡るおそれがある」としているが、これは米共和党の意向に同調したものだ。
ドナルド・トランプ大統領率いるアメリカ政府ではすでに、「TikTok禁止」の方途が検討段階に入っている。米中貿易摩擦の中でアメリカ側が切ったカードの1枚だと見て間違いないだろう。
半導体などの製造業で世界を制覇しつつある中国が、SNSなどのコンテンツ・プラットフォームでも主導権を握るとなると、アメリカにとっては不愉快だ。世界的な成功を収めつつあるTikTokに対し、悪評を広めたいという思惑が垣間見える。
TikTokは本当に“スパイ”なのか?
TikTok側にも問題がある。パソコンやスマホで、文章をコピーする際に使う一時的な置き場のことを「クリップボード」というが、TikTokがクリップボードに頻繁にアクセスしていることが有志ユーザーによって確認された。
これはユーザーを利するものではないため、我々の目には“スパイアプリ”だというふうに映る。実際にクリップボードの内容を剽窃(ひょうせつ)していたという証拠はないものの、「セキュリティ上の懸念」は大きいといえる。
ただし、ユーザーに確認することなくクリップボードにアクセスするアプリは他にもたくさんある。有志によって確認された該当アプリの中には「ABC News」や「Fox News」、その他各国製のゲームなども含まれており、TikTokだけの問題ではない。
実に多くのアプリが、不必要なクリップボードへのアクセスを繰り返していたわけだ。そうなると問題は、個別のアプリというよりも、iOSやAndroidなど、OS側の設計だということになってくる。
我々ユーザーはOSの開発者に対し、「アプリ側からクリップボードに許可なくアクセスできる」という仕様の見直しを求める必要があるだろう。