日本初の「事故物件マッチング」スタッフに聞く、孤独死現場のリアル
高齢者や外国人など物件を借りられない「住宅確保要配慮者」の増加が社会問題になっています。一方で、自殺・殺人事件などによる「心理的瑕疵」を抱える事故物件は、大幅に値下げしても1年以上入居が決まらないケースもあり、賃貸物件の経営において非常に大きなリスクになっています。
6月15日、横浜市の不動産会社、株式会社NIKKEI MARKSが、日本で初めて事故物件と住宅確保用配慮者のマッチングサービスを始めました。同社は2019年に事故物件専門の物件紹介サイト「成仏不動産」を開設し、1年間で全国の事故物件を累計1000件以上掲載。
その運営を担い、借り手と貸し手の双方の間に立つのがスタッフの金周瑢さん(44歳)と、顧詩韻さん(25歳)の2人。前回は事故物件のリアルな環境や海外との違いについて聞いたが、今回は事故物件・住宅確保要配慮者の現状と課題、サービスの狙いを聞いた。
「リスクとトラブル回避」が背景に
――なぜ、住宅確保要配慮者の入居を断るオーナーが多いのでしょうか。
金周瑢さん(以下、金):高齢者と外国人のいずれの場合も、入居させるリスクが大きいと判断するオーナーさんが多いからです。私の体感ですが、独身の高齢者は70歳を超えるとたとえ金銭的に余裕があったとしても、保証会社やオーナーさんの審査は極端に通りにくくなります。
その理由は、高齢者を入居させる大きなリスクである「孤独死」です。心理的瑕疵物件として掲載しなければならなくなり、入居者が集まりにくくなるほか、ご遺体の発見が遅れてしまうと特殊清掃やリフォームなどの費用もかかってしまいます。
特に暑い季節は死後3日も放置してしまうと腐敗がひどく、リフォームしても臭いが残ってしまう可能性があります。このような「事故物件化」による物件の価値が下がってしまうリスクを回避する意図があるのだと思います。
顧詩韻さん(以下、顧):同じ物件の入居者や近隣住民とのトラブルやクレームを回避する目的が大きいと考えています。「フローリングに土足で上がる」などの文化的な違いや、食生活の違いから生まれるニオイ、声量、ゴミ捨てなどのルールなど日本人の入居者と比べると気になってしまうことも多いですから。
さらに「帰国したまま音信不通になってしまう」「家賃の不払いが発生する」などのリスクも入居審査を厳しくする要因です。