紙パックもデザイン性の時代に。老舗企業が挑む“脱プラスチック”最前線
車中でも使いやすく設計
開発途中では、消費者の使用シーンを意識しながら製品設計を行ったといいます。
「容器開封後、どのようなシチュエーションで、どのように食べるのかを熟慮しました。例えば車中では、ドリンクホルダーを使うでしょうから、そこにちょうど良く入るようサイズ感を知るべく、市販されているドリンクホルダーの調査を行ったりしました」
開発時、特に苦労したのは、「ミシン目加工」と「密封シール」の部分。なんということもないミシン目やシールだが、見た目では分からない、想像以上の苦労が隠されていた。
「ミシン目の加工には、各製造工程で生じる加工負荷への耐性と易開封という機能の維持を両立させることが必須となります。そのため、ミシン目の設計と加工方法については、さまざまなテストを繰り返し実施することで最適化させました。
内容物充填後の密封シールは、紙コップとは過程が異なります。容器天面部を貼り合わせるようにシールを貼るため、容器端部やサイドシーム段差部の密封が難しかったです。形状や条件の最適化を確定させるため、試行錯誤を繰り返しました」
イメージを一新したい会社が採用
PA-PAUCHは、先行してサンエイ海苔の新商品である海苔のスナック菓子「海苔でサンド」のパッケージに採用された。サンエイ海苔は福島県相馬市で海苔加工・水産加工した特産品を展開する会社だ。
「海苔でサンド」は震災による風評被害や特産品のイメージと売り場の固定化に悩む同社が、イメージを一新し、新しい顧客との出会いをねらった商品で、PA-PAUCHで正面の広い印刷面にインパクトのあるロゴと柄を施したところ、海苔の棚に陳列されず、おつまみの棚などへの陳列が実現。新たな出会いが生まれた。
実際に、親しみやすいキャッチーなデザインと、片手に取りやすいサイズ感は売り手からの支持も集め、展示会での商談機会が増加するなど、多くの注目を集めることに成功した。越智さんと同じく、PA-PAUCHの開発にかかわった東洋製罐グループホールディングス株式会社のイノベーション推進室リーダー三木逸平さんは次のように話す。
「売り場陳列はもちろん、買った後にも注目いただきたいと思っています。我々が目指しているのは、パッケージのまま食卓に置かれるシーンなんです。PA-PAUCHは見栄えがよく、開封後も口が広く開くので、テーブルに置きながら、もしくは片手に持ちながら食べられます。鞄に入れて持ち運べば、出先で手軽におやつを楽しめます。パッケージがほんの少し変わるだけで、特産品からおつまみに、棚の中から食卓に、家から外にと、その商品のポジショニングが変わっていくお手伝いができると嬉しく思います」