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「いきなり!ステーキ」運営会社が114店閉店。原因は急すぎた拡大か

ビジネス

事業セグメント別の生産性を分析する

 次に「全社費用≒本部のコスト体質の問題」について整理します。ペッパーフードサービスの場合、セグメント分類と同粒度で「従業員数」のデータを有価証券報告書から入手できたため、この値を用いて分析を進めます。まず、各セグメントの「正規の従業員」数の推移をグラフ化してみます。

ペッパーフードサービス

図:セグメント別従業員数推移(有価証券報告書より筆者作成)

 いきなり!ステーキ事業の従業員数が著しく伸びています。店舗数が急拡大した2017年12月期→2018年12月期のタイミングでは345人→614人(前期比178%)と、ほぼ倍増に近い増え方をしています。

 また、見逃せないのが「全社(共通)」の従業員数推移です。グラフ上では見えづらいのですが、直近5期=5年間で40人→102人(255%)と2倍以上人員が増えています。事業推進と直接の関係がないポジションの人員も相応に増えている状況でした。

いきなりステーキのコストがかさんでいる

 今回はセグメント粒度がそろった状態の従業員数と営業利益額のデータが手に入ったため、「各セグメントの営業利益額÷各セグメントの従業員数」の式で「従業員1人当たりの営業利益額」を算出できます。この値によって「各事業部の生産性」を推定し、比較することができるので、算出の上グラフにまとめてみました。

ペッパーフードサービス

図上:事業セグメント毎の従業員あたり利益額/図下:事業ごとの店舗当たり利益額(共に決算短信・有価証券報告書より筆者算出・グラフ作成)

 ペッパーランチ事業は生産性の高さを比較的維持できているものの、いきなり!ステーキ事業は生産性は低く、2019年12月期にはさらに悪化しています。そして、それらの事業が生み出す利益額以上に全社(共通)のコストが年々かさんでいることが明らかになりました。

 コスト管理の甘さについては、重要な観点であるので「店舗ごと」に切り口を変えて、別のデータからも確認します。「各事業部の営業利益額÷店舗数」で、業態ごとの生産性が比較できるのでグラフ化しました。

 店舗単位の利益推移は下記のようになっています。

【ペッパーランチ事業】
 1店舗あたりの利益額は200万円台/店舗・年で推移

【いきなり!ステーキ事業】
 2018年12月期まではペッパーランチ事業と比較して高い利益を維持(600万円~1300万円/店舗・年)していたが、2019年12月期にはペッパーランチ事業と同程度に落ち込む

 したがって、いきなり!ステーキ事業については先述した通り、「客数の大幅な減少」「急激な店舗拡大」によって、店舗当たりの生産性を下げてしまっているようです。

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