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「いきなり!ステーキ」運営会社が114店閉店。原因は急すぎた拡大か

ビジネス

いきなりステーキ、不振の理由を探る

 まずはいきなり!ステーキ事業の不調の理由について整理・分析を進めていきましょう。まず、各ブランドの店舗数推移を確認します。

ペッパーフードサービス

図:ペッパーランチ・いきなり!ステーキ・その他事業の店舗数推移(有価証券報告書より筆者作成)

 グラフにすると、ペッパーランチが2015年12月期~2019年12月期まで安定的に拡大を続けている一方、いきなり!ステーキは2017年12月期と2018年12月期の間で188店舗→397店舗(昨年比211%)と「倍増」レベルで拡大していることが読み取れます。

 つまり、2018年にいきなり!ステーキブランドの店舗新設ラッシュが起き、急拡大が行われたということです。

店舗急拡大による失速は本当か?

 では、飲食業の生命線である売上および客数の月次推移はどのようになっているのでしょうか。決算発表資料に各期の「月次推移」のデータが出ているので、その値をグラフ化して検証してみました。

 月次速報が存在しない関係上、2020年1月以降についてはデータがなく、今回の分析の範囲外である旨をご了承ください。

ペッパーフードサービス

図:売上・客数の月次推移(昨対比)(ペッパーランチ・いきなり!ステーキのみ。決算報告資料より筆者作成)

 売上グラフと客数グラフを並べると、ペッパーランチ、いきなり!ステーキともにグラフの推移が連動しているため、「客数の変動=売上変動の主要因」と見なしてよいと考えられます。それを踏まえて客数の推移について簡単にまとめると、安定度が大きく異なることがわかりました。

【いきなり!ステーキ】
 全店(グレー)は2016年1月~2019年6月まで100%超だが、以降は昨対比減に転じている。一方で既存店(黄色)は2016年12月~2018年3月まで100%超。2018年11月以降は80%以下の大幅減少に転じている

【ペッパーランチ】
 全店・既存店ともに100%(±10ポイント前後の変動)で安定的に推移

 いきなり!ステーキの場合、「全店」と「既存店」で昨対比減少に転じたタイミングが異なり、既存店で2018年4月から下落トレンドが始まっているのに対して、全店では下降トレンドに1年以上のズレがあります。つまり新規店舗に人が集まっていて、それによって全体の売上は拡大基調にできていたが、既存店舗では客数を確保できないことが伺えます。

 したがって、大量出店による自社内競合の発生(カニバリゼーション)によって売上が減少したと指摘できるでしょう。

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