“自粛警察”が低所得層を苦しめる…広がるコロナの被害
富裕の懐にも低所得の懐にも、コロナ禍が大きな波を巻き起こしている。では、こうした中で最もダメージを受けるのは果たしてどの層なのか。マクロ経済学に詳しい経済学者の飯田泰之氏は、各層への影響をこう分析する。
資産家と叩き上げの経営者で明暗
「まず資産が1億円以上ある富裕層では、資産家と叩き上げの経営者でハッキリと明暗が分かれます。株や土地を受け継いでいる代々の資産家たちは株価が下がったとはいえ、全面的に資産がなくなるような資産価格崩壊は起きていないので、致命的な状況ではない。商売をしていても一旦はたたみ、資産保持に重点を置いています」
一方、ビジネスで成功し、富裕層までのし上がった経営者たちは梯子を外された格好だ。
「一代で富を築いた経営者などの新興富裕層たちは、稼ぎを生み出す商売がすべて止まっていますからダメージはかなり大きいです。ますます純粋な資産家と自力で稼いでいる層で差ができてしまい、上流層が二分化しています」
活発なビジネス展開で大きな雇用を生み出す新興富裕層の没落は、経済全体にとっても影響が大きい。ただ、彼ら以上に打撃を食らっているのは中流層だと、飯田氏は指摘する。
最も深刻な被害を被るのは中流層
「中流層は固定費の比率が大きいのが特徴です。例えば夫の給料が30万円、奥さんのパート代が10万円の典型的な中流家庭では、住宅ローンは月収の3分の1程度13万円ほどが平均的。子供の養育費、生活費などを含めれば毎月20万円は黙っていても出ていく。残り20万円しか余裕資金がない場合、3割でも収入が減少すれば生活は危機的状況となります」
夫の給料が自宅待機により2割減少し、営業自粛で妻のパート代がゼロになれば、収入はあっという間に4割減だ。
「普通の不況では徐々に給料が下がっていくので、引っ越しなどで固定費を切り詰めることができますが、ここまで鋭角に減少すると節約する時間もなく、いきなり首が絞まる。ですから、現在は中流層が一番厳しいのです」