2度のリストラを経て起業、東大卒の女性代表に聞く「料理人のサブスク」という内食の形
外出自粛の最中、悩みどころが毎回の食事だろう。特に、一人暮らしや普段あまり料理をしない男性にとってコンビニの弁当や外食が続くとなれば、レパートリーが限られ、栄養も偏ってしまう。
そんな中、プロの料理人に食事を作ってもらえるサブスクリプションサービスがある。管理栄養士、調理師、レストランシェフといったプロの料理人が献立の提案、食材の買い出しから要望に沿った料理までこなしてくれる「シェアダイン」だ。
同サービスを運営する株式会社シェアダインの井出有希共同代表に、起業した背景や家庭料理を伝える新しい仕組みについて話を聞いた。
「もがき続けた」怒涛の外資系時代
井出氏の経歴は、ともすると華々しい道を歩んできたように感じる。東京大学を卒業後、大手外資系企業を経て、シェアダインを立ち上げている。起業を学生時代から志し、これまでキャリアを積んできたかというと、「2016年くらいまでは起業したいとは思っていなかった」と話す。
「東京大学に通ったのは、もともと国際関係に興味があり、世の中の経済のアンバランスさに注目していたからでした。先進国と発展途上国の差はなぜ生まれているのかについて疑問を持っていて、大学に行けば高い水準で学べたり、同じような考えを持つ面白い人に出会えたりするのではと思ったのがきっかけです」
新卒では、外資系大手証券会社のゴールドマン・サックスに入社を決める。「当時はちょうど就職氷河期だった」という井出氏は「もがき続けた3年間」についてこう語った。
「ゴールドマン・サックスに入った理由として、日系企業の就活の際に『女性の仕事に対する裁量のなさ』から、理不尽に感じていたからでした。外資なら自分の頑張り次第で、やりたい仕事をこなせる。
そう思ってゴールドマン・サックスに入ったのですが、想像以上に仕事の成果を求められる環境に苦労しました。周囲で働く人と見比べても、明らかに『自分の付加価値を提供できていない』と感じましたね。結局、手探り状態で3年間もがき続けました」
リーマンショックでリストラを経験
ハイパフォーマンスが求められる外資系の洗礼を受けた井出氏は、必死に食らいつき、アナリストからアソシエイト職(財務管理)への昇進を手にした。しかし、事態が一変する出来事が突如として起こる。2008年、世界中に大きな衝撃を与えた「リーマン・ショック」だ。
「リーマン・ショックの影響で、大規模な人員削減をせざるを得ない状況となり、私もリストラの対象となりました。戸惑いの念はあったものの、仕事のことで悶々とする状況から解放される安堵の気持ちもありましたね」
リストラ後は、ゴールドマン・サックス時代に担当していた顧客のアライアンス・バーンスタインにスカウトされ、外資系の投資顧問会社でバイサイド・アナリスト(資産運用する側の証券を分析する職種)としての道を歩み始める。