「年齢と性別」でのターゲッティングはNG。大ヒットのメモツールを生んだ発想術
20代ビジネスマンにとってマーケティングやブランディングと聞くと、つい小難しいこと捉えがち。しかし、新型コロナウイルスで外出自粛の期間こそ、自らを磨くための新しい知識にチャレンジしてみてほしい。
東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的としたコンペティション「東京ビジネスデザインアワード」 で優秀賞と最優秀賞を受賞したのが今井裕平さん率いるビジネスデザイン会社kenma。
2016年度東京ビジネスデザインアワード優秀賞受賞から実現化し、累計販売46万本を突破したヒット商品がウェアラブルメモ「wemo」だ。その開発ストーリーをもとに、ビジネスマンが知っておきたいマーケティングやブランディングの基本を今井さんに聞いた。
建築事務所からコンサルタントに
――今井さんのキャリアは建築事務所からスタートしています。ビジネスデザイナー、経営コンサルティングに従事するようになったきっかけは?
今井裕平(以下、今井):もともとは神戸大学大学院に通っていて、卒業したら建築家になるつもりでした。ただ、絵を描くのが苦手で建築家の道は分が悪いとも感じていたんです。
大学院2年生の時、留学から帰ってきた先輩のすすめで初めてコンサルティングの仕事をしました。外資系コンサルティングのインターンです。建築の仕事でもコンセプトを作るのが好きだったので、ロジカルに考えて、新しいことを生み出したいなと。
――今の会社を創業したきっかけは?
今井:大学を出て、まずは建築事務所に入りました。推薦もあったのですが、最初から「とりあえず3年はやってみよう」というつもりだったので、2年でやめてしまいました(笑)。
2006年頃からサークル活動と称して、平日深夜にファミレスで集まってやって今の仕事につながる活動を行っていたのですが、その時のサークル名が今の会社の名前(kenma)でした。しばらくダブルワークで働いていましたが、2013年に法人化しました。しばらくは「中途半端なことをやっている」って言われましたね。
マーケティングとブランディングの定義
――今回の本題、マーケティングとブランディングですが、改めて今井さんが思う2つの定義をお教えください。
今井:電通コンサルティング時代、周囲から“知の巨人”と呼ばれていた人がいたのですが、「市場(market)にingがついたのがマーケティング(Marketing)。市場を作ることがマーケティングだ」と言っていました。僕自身、これが最もしっくりくるたとえだと思っています。市場とは、つまり買う人なので、買ってくれる人を作ることがマーケティングです。
一方でブランディングの語源は、牛に焼印をしたことでバーンド(Burned)がブランド(Brand)になったとか通説が色々あるみたいで、定義は人によって違いますが、僕は「ブランディングとは好きになってもらうこと」だと思っています。マーケティングは買ってもらうことですが、ブランディングは好きになってもらうこと。2つとも独立した概念ではなく、重複する部分がある。