90周年の津軽鉄道ストーブ列車。車内でスルメも焼ける
ストーブ列車の醍醐味
金木で上りの津軽五所川原行きと行き違ったほか、大量下車が発生し、まさかのガラガラ。せっかく空いたので、ストーブに近い席へ移動する。ストーブ列車券は座席が指定されていないので、自由に移動できるのだ。
一方、後ろの気動車は乗客がいない。ほかの季節でこの状況だと存続にもかかわり、常に観光客の誘致といった営業活動の成果が求められる。これは中小私鉄共通の課題で、あの手この手を使い、永年存続と盛り上げに必死だ。人口減少、少子高齢化と叫ばれるこの時代、バスなども含めた事業者とメディアの連携が必要不可欠といってもよい。
金木を発車すると、車内販売員の威勢のいい声が響き、購入する乗客も。ストーブ列車の醍醐味は、車内でスルメを食すことだ。アテンダントが購入済みのスルメをダルマストーブの上で焼き、豪快に調理する。軍手をはめているとはいえ、見ている側としては「すごい」という言葉しか思い浮かばない。
焼いたスルメを自席でとるから、まるで簡易食堂車のよう。日本酒が1番合うようだが、飲めない人などのために車内販売ではお茶も用意されている。
ストーブ列車3号は12時35分、終点津軽中里に到着。車内の整備、点検と並行し、ディーゼル機関車は隣の機回し線を使い、気動車の前に移動。ストーブ列車4号津軽五所川原行きとして折り返す。復路は比較の意味で気動車に乗ろうかと考えたが、ストーブ列車をまだまだ楽しみたい思いが強く、窓口でストーブ列車券を購入した。
ストーブ列車は、今日も“冬のカナタ”へ向けて走り続けてゆく。元号が平成、令和に変わっても、車内のぬくもりは“昭和の古き良き時代”を保ち続ける。「2020年は昭和95年なのだ」と。
<取材・文・撮影/岸田法眼>