震度6弱の地震で電車はどうなる?西武鉄道の復旧訓練で見たリアル
備蓄品を配布し、急場をしのぐ
③ 帰宅困難者支援訓練
別の場所では、池袋線石神井公園駅に見立てた帰宅困難者支援訓練が行なわれた。池袋線は復旧のメドが立たないため、22時から駅で備蓄品を配布する設定だ。
駅員は外国人の乗客がいることを想定し、ポケトークを使い、英語でも案内放送を流す。ほどなく、カロリーメイト(2本入りのハーフサイズ)、ミネラルウォーター、レスキューシート(アルミブランケット)を配布する。
西武によると、駅によって備蓄数は異なるが、駅の収容面積による受入人員に応じた量を用意しているという。例えば、池袋駅は1794人分、西武新宿駅は382人分を確保している。ただ、備蓄品はあくまで交通弱者(子供、妊婦、障害者など)の方に提供するもので、健常者の方には地方自治体などの一時滞在施設を利用してもらうこととしているそうだ。
また、トイレについては災害時に停電などの恐れはあるものの、駅に備えているため、簡易トイレは用意していないという。
このほか、倒れた遮断機を起こす遮断機倒壊復旧訓練、軌陸車を使った電車線復旧訓練が行なわれた。
今回の訓練では、全線復旧までの日数について、新宿線は2日、池袋線は7日以内を目標におくことを特定災害対策本部長に報告し、訓練は終了。消防、警察の連携もスムーズで、滞りなく終えた。
メディアは訓練にもっと関心をもってほしい
私事で恐縮ながら、鉄道事業者の訓練取材は2年ぶり3回目。いずれも報道公開に参加したのは約10社で、来賓や見学者の数より明らかに少ない。
スケジュールや紙面(誌面)の都合もあるだろうが、地震災害が世界各国で発生し、政府が発表した首都圏直下型地震や南海トラフ地震などがいつ起きてもおかしくない。2019年は台風15・19号の影響で甚大な被害をもたらし、鉄道は長期不通区間も発生した。
“災害に対する各社の取り組み”をくわしく報じ、実際発生した場合の混乱を防ぎ、死傷者を1人も出さないのがジャーナリズムの役割ではないだろうか。
【取材協力:西武鉄道】
<取材・文・撮影/岸田法眼>