非電化区間にも進出「JR九州」蓄電池電車・DENCHAの乗り心地は?
芸が細かいインテリア
車内の空調効果を維持するため、車内外に半自動ボタンが設置され、ボタンを押して車内へ。軽く押すだけで開閉できるので、交通弱者の方でもラクに押せる。
車内はロングシート。JR九州は2010年代に入ってから、ラッシュ時の混雑緩和を重視したのか、近郊形電車のロングシート化が目立つ。水戸岡氏は背もたれに木材を使い、複数のシートモケット、戸袋部分に枕を用意したほか、床にDENCHAのロゴを散りばめるなど、いつもながら芸が細かい。“魅せるインテリア”には、どの車両も舌を巻く。
洋式トイレとフリースペース(車椅子&ベビーカー用)は、クハBEC818形に設置。特に後者は、ささやかながら介助用の腰掛が設置されており、車椅子やベビーカーを押す人の負担が軽減されるだろう。また、ラッシュ時向けなのか立客用のクッションパネル(腰あて)も設けられている。
旅客情報案内装置はLCDで、日本語、英語、韓国語、中国語に対応。乗降用ドア上に千鳥配置されているほか、妻面(車両連結部)にも設置。特に後者はエネルギーの状態も案内しており、興味深い。
なお、BEC819系はワンマン運転中心ながら、運賃箱や運賃表は設置されていない。
折尾駅でパンタグラフ上昇
「ドアが閉まります。御注意ください」
車内の自動放送が流れると、開いている乗降用ドアが閉まる。また、すべての乗降用ドアが閉まっていても、ドアチャイムが鳴動する。
ただ、音はJR東日本の首都圏電車と同じで、インテリアにまったく調和しておらず、がっかり(全国的にその音を使う鉄道事業者が多くなり、その姿勢が理解できない)。813系などで使われている、耳になじんだ「ポーン」のほうが断然よい。
11時57分に発車。国鉄の気動車はどこか重そうな感じで発車するのに対し、BEC819系は滑らかに進む。
駅に到着すると、半自動ボタンの閉スイッチを押さない乗客が多い。九州に限ったことではないが、後ろにほかの乗客がいないときは閉めて、車内の快適な環境づくりに努めるべきではないだろうか。
さて、非電化区間に電車が走るというのは、不思議な光景だ。複線を走行しているので、まるで第3軌条地下鉄の地上区間に乗っているかのような錯覚を受ける。もっとも、地下鉄が地平を走ることは、ほとんどないが。
本城を発車すると、高架を登り、12時13分、折尾6番のりばに到着。ここから電化区間に入るので、運転士はパンタグラフを上昇させ、9分停車中に主回路蓄電池を充電する。乗務員室から「急速充電中です」の音声が聞こえ、80%を超えたところで鳴りやむ。
200メートル離れた鹿児島本線ホームでは、超豪華寝台列車〈ななつ星 in 九州〉が小倉方面に向けて発車していった。折尾駅は高架化工事の真っ只中で、完成すると鹿児島本線ホームと筑豊本線ホームのあいだに駅舎を構え、改札口を1か所に集約する。
12時22分に発車。架線から集電した電力で走ると、速度が幾分速くなり、12時41分、終点直方1番のりばに到着した。