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銀座線01系がなぜ東大に?実用化された研究成果も…

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01系でも曲がれない急カーブと一部の線路が白い理由

東京大学

実験線の建屋付近に特殊なレールが敷設されている

 千葉実験線は先述した通り333メートル。線路の幅は銀座線や新幹線などと同じ1435ミリで「標準軌」と呼ばれる。線路は千葉実験所の建屋内から始まり、外へ出て少し進むと左へ曲がり、踏切を通過する。取材した2019年9月は台風15号の影響で、遮断桿が損傷し撤去されていた(現在は復旧)。

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曲線半径33メートルのカーブ

 曲線半径は、なんと33メートル。台湾出身の林世彬(LIN Shih-Pin)特任助教によると、通常の01系では曲がりきれないという。千葉試験線は研究の成果を試すもので、例えば曲線半径10メートルクラス対応の逆勾配独立回転車輪を用いた実験台車といった“未来に向けた鉄道車両”の実用化に向けて邁進している。

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白いレール

 また、レールの一部は白の塗装を施している。視認性向上、日射による軌道破壊抑制、メンテナンスのコストを低減するためだという。夏の日射などでレールの温度も上昇し、伸びるほか、最悪、座屈するなどの変形が生じてしまう恐れがある。

 レールを白塗装することで、レールの温度上昇を抑える効果が若干あるそうだ。レール上塗装は、日本においては継ぎ目部において視認性向上目的で実施されているほか、レールの伸び抑制目的で、韓国の高速鉄道KTX、イタリアの国鉄線においても実施されているが、広くは普及していない。

 今や異常気象が当たり前となってしまったのだから、猛暑・酷暑対策の観点から“白いレール”を検討してもよいのではないだろうか。

東京大学生産技術研究所が開発、実用化したもの

 東京大学生産技術研究所の手により、開発、実用化されたものを御紹介しよう。

○自己操舵台車

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JR東海383系は振子車両にすることで、曲線区間の通過速度を向上させた

 1994年8月に登場したJR東海383系は、曲線区間においてレールへの負担力を軽減させるため、須田教授、JR東海、住友金属が自然に半径方向を向く自己操舵台車を共同開発した。車輪と車軸は自動車がカーブに沿ってハンドルを切る感覚で、スムーズに走行できる。

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こちらも振子車両のJR北海道キハ283系

 また、JR北海道のキハ283系も操舵台車を採り入れており、須田教授も若干かかわったという。

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丸ノ内線2000系の操舵台車

 その後、須田教授、住友金属、東京メトロの共同開発により、「〈(ワイドビュー)しなの〉(383系)と〈スーパーおおぞら〉(キハ283系)のいいとこどりをしたような恰好」(須田教授談)という、新しい操舵台車を東京メトロ銀座線の次世代車両1000系に採り入れた。

 以降、カーブが多い日比谷線13000系、丸ノ内線2000系にも採用。他社では、13000系との共通点が多い東武鉄道70000系も採用された。

 このほか、東京大学生産技術研究所が開発した摩擦制御を東京メトロ丸ノ内線と千代田線の各分岐線車両に導入。“「摩擦調整剤」という名の潤滑剤”を使い、車体から噴射することで、レールと車輪の摩擦を低減している。

○3人掛けボックスシート

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モックアップの座席は、東急バスで使われていたものを使用

 01系の隣に、車内の快適性を評価する目的で、実物大スケールの車体のモックアップがある。移転前から導入されており、乗り降りや着席などを検証するもの。「人間がなにをもって快適とするか」という研究により3人掛けのボックスシートを開発し、2007年、東京急行電鉄(現・東急電鉄)2代目7000系に導入された。3人掛けにすることで着席行動が変わるという。

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2代目7000系の3人掛けボックスシート

 実際に乗ってみたところ、3人掛けの効果なのか、ロングシートがある程度埋まってから、ボックスシートを選択する乗客が多かった。

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