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コカ・コーラ、好調な「Coke ONアプリ」で進めるスマホ自販機戦略

ビジネス

「稼げる自販機」へのテコ入れ

 日本の清涼飲料水市場の成長はここ数年、炭酸、ミネラルウォーター、コーヒー、緑茶が牽引。猛暑の影響もあってスポーツ飲料や果実飲料、ウーロン茶を除くとおおむね堅調にみえますが、原材料価格の高騰やコンビニコーヒー、チェーン店、マイボトルとの闘いといった厳しい経営環境でもあります。

 さらに馬鹿にならないのが人材不足による物流コスト増、EC普及でダンボールなどの包材費も収益を圧迫。コカ・コーラも今年1月から27年ぶりに大容量ペットボトルの希望小売価格を一律20円値上げしたばかりです。

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図表2/清涼飲料水品目別生産量推移(一般社団法人全国清涼飲料連合会)

 そんななか掲げられたのが、ベンディングビジネス(自販機によるD2C販売)の抜本的な再構想。販売数量シェア25%を握る、コカ・コーラブランドの最強チャネルを強化しようというわけです。

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図表3/販売数量が対前年同期比-7%のなか、ベンディングは-2%にふみとどまる(コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社2019年第2四半期決算説明会資料より)

 自販機ビジネスは飲料メーカーや株式会社ユカ、ジャパンビバレッジといった専業設置会社が設置工事とハードウェアの費用を負担し、設置場所の提供者が販売1本あたり手数料を得るシステム。この手数料が、120円の製品で30~50円といわれる小売店の流通マージンに相当します。企業や大学の自販機がしばしば割安なのは、儲ける必要がない設置場所提供者が手数料分を割り引いているおかげです。

 メーカーが設置する自販機は消費者とダイレクトにつながる「直営店」で、自由度の高いチャネル。小売店だと飲料はセール対象になることも多いので、メーカー希望の価格で販売できる自動販売機なら、ブランド毀損を気にしなくていいというメリットもあるかもしれません。

 とはいえ、小売店というパートナーを通さないなりのリスクは、自販機本体と設置工事という投資です。2018年の機械統計によると、飲料用自動販売機の出荷金額は1台あたり平均約350万円。

 日本自動販売機工業会の「自販機普及台数及び年間自販金額」(2016年)によると全国飲料用自販機の売上は約1741億円、1台あたりの売上は平均81.6万円ですが、売上日本一だと年3600万円に上ります。ピンからキリまで競争力には差がありそうです。平均レベルの売上だと350万円のハードウェアと工事費の回収だけで5年ほどかかる計算なので、回転率アップは切実な課題といえるでしょう。

オリンピック応援キャンペーンも

 Coke ONはコカ・コーラが誇る「直営店」網を活かしつつ、「買う」「飲む」「楽しむ」シーンにおけるユーザー体験を提供するデジタルプラットフォームと位置づけられ、次々に新機能を追加してきました。

 今年6月にはスマホカメラと連動した東京オリンピック応援機能をリリース。従来はスマホ自販機での購買者にターゲティングしてきましたが、販売チャネルに関わらず製品に掲載された応援マークのスキャンで、スタンプとは別のポイントをゲットできるようになりました。ポイントは聖火ランナー応募権やオリジナル応援グッズの交換券として利用できます。

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オリンピック応援マークをカメラで読みとると、自販機で買わなくてもポイントがもらえる

 キャンペーンの魅力に加え、スマホ自販機ユーザーを大切にしつつ小売店チャネルでの購買客も楽しめるようになったせいか、6月は女性ユーザーが270万人に。2年間で男性は2.6倍、女性は3.4倍に増加しました。とくにこの半年ほどは女性ユーザーが増えて、8月の男女比は6:4でした。

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図表9/Coke ONアプリのユーザー推移(男女別、ラベルは各層最多の月)

 年代別だと、30~50代はサイトリニューアルとオリンピック応援キャンペーンが始まった6月の利用が最多。60歳以上もこの半年ほどは50万人以上が利用しています。

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図表10/ Coke ONアプリのユーザー推移(年代別、ラベルは各層最多の月)

 2年間の伸び率が最高だったのは20代で、3.3倍に増加。最高値を記録した2月以降は100万人以上が利用していて、一気に定着が進んだようです。

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