市営地下鉄ブルーライン、新百合ヶ丘延伸を予測。注目点は…
新百合ヶ丘まで延伸のデメリット
ブルーラインの延伸で懸念しなければならないのが、小田急、東急のどちらかで、運転見合わせなどの輸送障害が発生した場合だ。特に平日朝のラッシュ時に発生すると、パンクの恐れがある。
小田急小田原線は代々木上原―登戸間の複々線完成により、最混雑時間帯における混雑率は194%(2017年度)から150%台(2017年度末151%、2018年度157%)に緩和された。また、快速急行の増発によるスピードアップ、着席サービスの向上などが呼び水となったようで、2018年度の輸送人員は約1300人増加し、約7万6000人が乗車している。
一方、東急田園都市線の最混雑時間帯における混雑率は182%(2018年度)で、約7万4000人が乗車している。2008年より大井町線に急行を設定し、目黒線も含め“田園都市線のバイパス”にすることで、新しい都心ルートを開拓し、それなりの成果を得た。しかし、依然として田園都市線の依存度が高い。
どちらかで輸送障害が発生すると、振替輸送が発生し、相当数がブルーライン経由で都心へ向かうことが予想される。人口が減少し、ラッシュ時の混雑率が下がったとしても、広範囲にわたる大混乱は避けられない。
概算事業費増加の可能性があることを承知のうえで、振替輸送に備えた策を述べると、ブルーライン新百合ヶ丘駅のホームを2面4線で建設し、1面を降車専用に充て、その先に引上線を設けること。乗降ホームを別々にすることで、動線の確保ができる。また、上下列車各2本を入線できるようにすることで、下りホームは混雑の抑制、上りホームは終点到着目前での停止信号を防ぐ。
新百合ヶ丘まで延伸の注目点
1. ブルーライン新百合ヶ丘駅
先述したとおり、ブルーライン新百合ヶ丘駅は、小田急新百合ヶ丘駅南口付近に建設予定である。新百合ヶ丘駅周辺は完成された街並みなので、建設工事の難航を懸念する。ほとんどが私有地の下に建設することが予想され、用地の買収が必要になるからだ(ただし、大深度地下使用法を適用する場合、地権者の同意がなくても建設できる)。
おそらく、南口バスターミナルの下にブルーライン新百合ヶ丘駅を建設するものと考えられるが、バスの運行に影響を与えないことが大前提となる。
2. 快速停車駅の見直し
快速は2015年に運転を開始し、あざみ野―新羽(にっぱ)間の各駅、新横浜、横浜、桜木町、関内、上大岡、上永谷、戸塚―湘南台間の各駅に停まっている。新百合ヶ丘延伸により、停車駅の見直しが考えられる。
例えば、新百合ヶ丘―新羽間は、3新駅、中川、仲町台を通過することで、新百合ヶ丘―新横浜間の速達性をより強調でき、所要時間約27分をさらに短縮できるだろう。
3. バス
資料を見る限り、横浜市と川崎市はブルーライン新百合ヶ丘延伸で、既存のバスを中心とした地域交通との連携などによる、相乗効果を期待しているようだ。したがって、現行のバスに変化が起こったとしても、停留所の改称、小規模なルート変更になるものと考えられる。
ブルーラインあざみ野―新横浜間延伸時、横浜市交通局は市営バスの港北ニュータウンエリアを中心にいじり過ぎるほど再編してしまい、ほとんどの系統において利便性が大きく低下した。“市営地下鉄と市営バスのスピーディーな乗り継ぎ”を重視したがゆえ、乗車区間の運賃が割高になってしまったのだ。乗継割引適用は定期券のみ。大阪市交通局(現・大阪市高速電気軌道)のように、乗車券でも適用すれば、展開も変わっていただろう。
その後、営業所を含めた廃止、運行区間、運転本数の見直しなどを余儀なくされた。各バス事業者は、ブルーライン新百合ヶ丘延伸後も市営バスの二の舞にならないよう、現行通りの利便性を維持するほか、市営地下鉄と他社局バスとの乗り継ぎ割引を設定するなど、“より使いやすい交通機関”に整備してほしい。
<取材・文・撮影/岸田法眼>