東京メトロとNTTが協業。混雑緩和は期待できるのか
① CBM:CBTCの早期導入なるか?
ここからは今後の期待に関して、4つのポイントを紹介したい。
東京メトロの保安装置は、全線でCS-ATC(Cab Signal-Automatic Train Control:車内信号式の自動列車制御装置)を採用しているが、現時点でCBTC(Communications-Based Train Control:無線式列車制御装置)の導入に向けた準備を進めており、丸ノ内線と日比谷線は2023年度に、半蔵門線は2024年度に稼働する予定だ。
CBTCは、列車がどこにいるかという位置情報、速度を無線で把握することで、列車の間隔をさらに短くし、遅延回復効果の向上などを図るもの。従来のATCに比べ、運行の安定性が向上される模様だ。もし、NTTの技術を保安装置に応用すれば、予定より早く実用化できるように思える。
山村社長によると「通信技術が基本になりますけども、今のところ、どういう技術が有利であって、それをどこのものを使うかははっきりとは決まっておりません」とのことで、予定通りの実用化を目指すようだ。
② CBM:トンネル点検のスピードアップ
2018年9月27日に東京急行電鉄、伊豆急行、首都高速道路、首都高技術の共催で、鉄道版インフラドクターの報道公開が行なわれた。伊豆急行線で実証実験を行なったところ、全線31か所のトンネル検査が十数日から2日間に短縮された。その後、「映像や画像の解析を行ない、悪いところを抽出し、当該箇所を打音検査で確認する」と筆者は聞いている。
さらに図面や検査の記録、修理の記録などが別々の台帳管理から、一元的な管理が可能になることから、業務の省力化、高度化、効率化が図られるものと考えられる。
そして、NTTもインフラの状態把握をデジタルデーター化しているほか、検査用の車両も保有している。
東京メトロでは、1路線につき1年間かけてトンネルの打音検査が行なわれている。終電から初電までのわずかな時間に検査を行なうため、1日に検査できる距離は約300メートル(丸ノ内線新宿―新宿三丁目間に相当)だという。NTTの技術を保守用車両に採り入れると、大幅な短縮に加え、1年間で全9路線のトンネル検査ができるのではないだろうか。
山村社長によると「各技術領域の進歩は著しいと思っておりまして、我々の技術開発の大きなテーマと思っておりますが、技術動向の把握をしながら、どういったメンテナンスに活用できるか、詰めていきたい。こういう段階です」とのことで、新技術を導入する可能性はありそうだ。
③ TDM:乗換駅のさらなる増加
東京メトロでは2013年以降、乗換駅が増え、利便性の向上に努めている。
○2013年3月16日
・日比谷線秋葉原駅=都営新宿線岩本町駅
○2018年3月17日
・日比谷線、都営浅草線人形町駅=半蔵門線水天宮前駅
・日比谷線築地駅=有楽町線新富町駅
いずれも改札外かつ、一旦地上を出ての乗り換えとなり、今後も増えるものと考えられる。少々時間がかかることを承知のうえで私案を述べさせていただくと、下記を乗換駅に指定し、新たなルートを構築してみてはいかがだろうか。
・千代田線湯島駅=都営大江戸線上野御徒町駅=銀座線上野広小路駅=JR線御徒町駅=日比谷線仲御徒町駅
・千代田線二重橋前駅=丸ノ内線、JR線東京駅
・有楽町線麹町駅=半蔵門線半蔵門駅
特に二重橋前駅は、出入口7(千代田線は10号車の乗車が便利)から行幸地下通路を経て、丸ノ内線東京駅、JR線東京駅丸の内地下中央口まで徒歩約5分。出入口1(千代田線は1号車の乗車が便利)から京葉線東京駅の出入口7まで徒歩約4分30秒で行けるにもかかわらず、双方とも「乗換駅」と案内していない。ほかの鉄道事業者も乗換駅を再考し、新ルートの形成、従来ルートの混雑緩和に努めてほしい。
④ NTTのさらなる発展
NTTにとっても、鉄道事業者との協業は今後のビジネスチャンスとなる。澤田社長によると「過去に数社と業務提携などをしたことはある」という。そして、包括的な実施は今回の東京メトロが初めてだという。
東京メトロとNTTの“相互直通運転”により、成果次第によっては“「革命」という名の新しい風”が吹くに違いない。
【取材協力:東京地下鉄、日本電信電話】
<取材・文/岸田法眼>