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日本と海外の映画業界の”ざんねんな違い”。鬼才監督が語る

暮らし

外国映画の動員数が減っている

よこがお

――日本では邦画のシェアが拡大する反面、外国映画の動員数が減っています。これについてどう思われますか?

深田:映画がドメスティックになっていけばいくほど、日本人にしか分からないような表現が増えていき、映画としての可能性を狭めていくんではないかと思っています。

 日本の映画産業が貧しくなっていくなかで、デジタル化で簡単に映画を製作できるようになり、東京など大都市ではビデオ作品をすぐ上映できるようなインフラも整いました。

 2000年代以降からミニシアターが日本のインディペンデント映画や自主予算映画を上映するようになった一因には、海外の映画を配給するよりもリスクが低いから、というのもあるんじゃないでしょうか。

インディペンデント映画のデメリット

――でも、日本のインディペンデント映画がたくさん作られるのは、ある意味、日本の若手監督にとってはよい状況なのでは?

深田:作り手の側からすると正直、五分五分ですね。いろいろな日本映画が作られていることはよいことですが、自戒を込めて言いますが20~30代のある程度キャリアのあるインディペンデント映画監督が予算を集めることに力をいれずに、200万~300万円ほどの自主予算で学生を使い映画を作ることは、長期的に見て、映画の多様性の幅を狭めることになります。

――どういうことでしょうか?

深田:というのは、資金をきちんと集めて映画を作らないと、数か月間お金が支払われなくても生きていける経済的に恵まれた人だけしか、映画に関わることができなくなってしまいます。

 実際に、東京に実家があるだけで映画作りには有利だし、男性のほうが女性よりも圧倒的に有利です。映画作りをしていた女性のなかには、子どもができると映画から離れなければいけないという人も多い。そういった限られた人だけが映画作りをできる状況が肯定されかねないのが、インディペンデント映画の現状でもあります。

女性の映画人を支援する制度は日本にない

よこがお

日本では“母親が子供を育てなくてはいけない”という社会的抑圧が強い

――フランスでは映画制作に一定数の女性を雇用すれば助成金が得られる制度がありますが、日本では女性の映画人を育成したり保護したりする制度はないのでしょうか?

深田:2年前の東京国際映画祭で「女もつらいよ」というシンポジウムが開かれ、海外から女性映画人が招かれたんですが、ドイツ、フィリピン、インドよりも日本の女性映画人のほうが生きづらい傾向にあるということを知りました。

 どこの国でも男性のほうが女性よりも有利ですが、これらの国ではベビーシッターを雇う文化があるので、子育てをしながらでも映画作りができる環境があります。

 日本の女性映画人たちが「女性同士で助け合い映画作りをできるような環境を整えよう」と議論していたら、ドイツ人女性プロデューサーが「その議論は間違っていないけれど、なぜ男性を巻き込まないの?」「男をもっと使えばよいのに」と発言したことが印象に残っています。

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