なぜ高校生は国家に抵抗したのか?「ベルリンの壁」以前の東ドイツで起きた実話
東ドイツ出身者によるキャストを揃えたわけ
――本作のほぼ全員が東ドイツ出身だと聞きました。
クラウメ監督:よりリアルな物語にしたくて、あえてキャストは東ドイツ出身者を選びました。彼らの個人的な経験が役作りに活かされるだろうし、脚本にもアドバイスしてくれると思ったからです。
例えば、校長役のフロリアン・ルーカスも東ドイツ出身で、原作や映画で描かれているように、教師の資格や経験がないのに、いきなり任命されて生徒たちに教えるはめになったという教師が、東ドイツには実際にたくさんいたと教えてくれました。そういった即席の教師は、授業でなにをやったらよいのかさっぱり分かっていなかったそうです。
映画製作の素晴らしい点は、こういう風に違う視点の人達がたくさん集まってひとつの作品を作り上げるところなんですよね。様々な人とコラボレーションすることによって、自分の想像以上の作品が出来上がりますから。
クラウメ監督が、若者に伝えたいこと
――今、アメリカでは、資本主義が生み出した経済格差に幻滅して社会主義や共産主義に共鳴する若者が増えていますが、監督はこの流れをどう思いますか?
クラウメ監督:中国が民主化なしにあれほどの経済発展を遂げたのは驚きですよね。とはいえ、共産主義が資本主義の欠点を解決できるとは到底思えません。民主主義や資本主義は完璧ではないですが、これよりマシな政治システムって他にありますかね……?
今の若者に伝えたいのは、まずヨーロッパの歴史を知ること。戦争、植民地政策、独裁主義、近代社会の誕生、社会主義と共産主義……こういったことがぎゅっと詰っているヨーロッパの歴史を通じて、人間の犯した間違いや異なる主義主張を学ぶことは、きっと自分の意見を形成していくことに役に立つんじゃないでしょうか。
<TEXT/此花さくや 撮影/山田耕司>