リクルート、驚きの給与システム「結果より“Will=意志”に先払いする」
リクルート(現・リクルートホールディングス)ほど多くの起業家を生み出している企業も珍しいでしょう。
有線放送サービス「USEN」で会長を務めた宇野康秀氏や、生活総合情報サイト「オールアバウト」を立ち上げた江幡哲也氏をはじめ、その顔ぶれはまさに多士済々です。
なぜ、これほどまでに人が育つのか?「出る杭」を伸ばすといわれる企業風土もそうですが、加えて、他社にはない給与に対する独自の考え方が背景にあるようです。
評価の軸は、実力や経験ではなく「Will」
リクルートの社員への評価は、基本的には社員が目標を設定したうえで、上司と部下が定期的に面談をするというものです。これだけでは、さまざまな企業でよく行われている形に見えるかもしれませんが。しかし、リクルートのユニークさは、ここから。
先進企業のさまざまな給与のあり方を紹介している書籍『給与2.0 10年後も給与が上がり続ける新しい働き方』(アスコム刊)によると、リクルートの評価の軸は、実力や経験ではなく「Will」と呼ばれる概念にあるというのです。
以下は、同書の著者・高橋恭介氏(一般社団法人『人事評価推進協議会』代表理事)が、リクルートホールディングスの人事統括室室長に取材した内容を、著者承諾のうえで要約したものです。
さて、リクルートでいう「Will」とは、「自分が社員としてこうなりたい、会社でこれをやってみたい」という強い想いのこと。そして会社側も、この社員の想いを応援し、若くして責任者に抜擢したり、希望する海外法人の社長を任せたりするケースもあります。
実績が不足していたとしても、「Will」を重視することで、社員は身の丈以上のキャリアを身に付けることができます。その想いを、会社と社員が共有する場として、面談が機能しているのです。
面談で重視するのは「ワクワクしているかどうか」
面談やフィードバックの際に重視しているのが、上司も部下も「ワクワクしているかどうか」。
一般的な企業の面談と異なり、タスクのすり合わせや仕事の精度の向上を目的としていません。ゴールはパフォーマンスを高めること。社員本人が「よし、頑張るぞ」という気持ちになって終われることを大事にしています。
ただし、社員が勝手にやりたいことをやれるわけではありません。社員本人はどうありたいのか、上司は部下にどうあってほしいのか、そのために何ができないといけないのか。
この「Will/Must/Can」のつながりを具体的に意識しないと、互いが望む結果に到達できません。つまり上司と部下が「これができたらワクワクするよね」という共通認識をすり合わせることが重要なのです。