「発達障害の恋愛」の知られざる男女格差…モテるのは女性ばかり?
独特なコミュケーションや、行動において極端なこだわり持つなど、身近にいる少し変わった人……発達障害の当事者たち。
前回は発達障害の当事者に迫るルポ『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)の著者・姫野桂さんに、当事者の「仕事」での困難について聞きました。
今回は当事者の「恋愛事情」に迫るべく、前回に引き続き姫野さん、そして渋谷の「発達障害バー BAR The BRATs」(以下、「BRATs」)のマスターであり、自身も発達障害の当事者である光武克さんに話を聞いてみました。
日常生活や仕事で精一杯で、恋愛まで手が回りにくい
姫野さんは当事者をめぐる状況についてこう話します。
「当事者が社会に出てまず“生きづらさ”に直面するのは、仕事のシーンです。当事者への取材では交友関係や恋愛に関することも聞きましたが、『日常生活と仕事をまともに行うのに精一杯で、恋愛まで手が回らない』という人が多い印象でした」(姫野さん)
発達障害は、主にADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)の3つに分類されます。なかでも対人関係やコミュニケーション能力に関わってくるのがADHDとASDです。
当事者は公私の“公”の場面、仕事上の苦労から診断を受けるケースがほとんどのようですが、“私”の場面、プライベートでの苦労はないのでしょうか?
「ADHDの特性が強いと、やるべきことが常に脳内で氾濫しがちです。そのため恋愛に関しては、真面目な人ほど関わる人すべてのことを律儀に考えて、結果、特定の人とじっくりと向き合うことが難しいのでしょうね。男女で比較すると女性は割と恋愛経験が豊富な人が多いのに対して、男性は奥手というか恋愛経験が極端に少ない印象を受けました」(姫野さん)
姫野さんの印象によれば、恋愛において当事者の男女間のギャップがあるといえそうです。では、当事者の男性はそのあたり、どう感じているのでしょうか?
女性はモテ要素として捉えられやすい?
発達障害の当事者であり、渋谷・表参道の発達障害バー「BRATs」でマスターを務める光武さんに尋ねてみると……。
「当事者の特性を周りがどう受け止めるかだと思います。例えばADHDでいう注意欠陥という特性は、男性だと“頼りない”、“だらしない”と思われがちですが、女性がやると“ドジっ子”や“天然ちゃん”という言葉がからわかるように、なんだか可愛らしいモテ要素として捉えられやすいのかなって思います。
『BRATs』を経営していても、お客さんの8割ほどが男性です。女性が少ないのは、恋愛面においては定型発達(発達が平均的)の方から非難されることが少なく、むしろ特性がモテ要素として褒められるケースが多いから。
彼女たちの中では苦労を共感してほしいというニーズが少ないのかもしれません。実際、お店を訪れる女性も、恋人がいる人がほとんどです」