LINEの「個人情報の取り扱い」がここまで問題視される理由
コミュニケーションアプリの国内一番手、LINE株式会社が渦中にある。LINEがユーザーから預かっている一部の個人情報につき、中国国内にある関連企業からアクセスできる状態になっていたことが「朝日新聞」の報道で明らかになり、LINEは3月23日、会見を開いて謝罪した。
実際に個人情報の流出や悪用が確認されたわけではないというが、LINEはいまやインフラであり、そのセキュリティ体制は日本人の一大関心事となっている。その反面、実際問題としてユーザーレベルで「できること」は何もないのが実情だ。
そこで今回は、LINEの情報セキュリティに関して「そもそも何が問題なのか」を、筆者個人の見解を交えて解説していきたい。
そもそもLINEは多国籍企業だ
LINEの“個人情報”問題の発覚に対し、世間は想像以上にセンセーショナルな反応を示した。LINEといえばコミュニケーション以外にも、電子決済や個人認証などさまざまな場面で使われており、もはや社会の基幹と言えるほどの進化を遂げたからだろう。
しかし元をたどれば、LINEは韓国の「NAVER」社のプロジェクトとして始まった。日本市場で爆発的ヒットとなってからは「和製」とも称され、現在の株式会社LINEの経営トップも日本人だ。だからLINEのことを「海外のアプリ」だと思わずに使っているユーザーも多いかもしれない。
LINEは、タイやインドネシアなどの国でも盛んに利用されており、LINE社も事実上の「多国籍企業」である。LINEの個人情報を取り扱うサーバーがすべて日本国内にあると考えるのは、むしろ不自然なことだ。
LINEに限らず、我々が日常的に利用するスマホアプリのうち、通信が日本国内だけで完結しているものはほとんどない。ソーシャルゲームの多くは海外企業のクラウドサーバーを利用しているし、InstagramやTwitter、TikTokといった人気のSNSにしても“国産”ではないのだ。
ネットの世界に“国境警備隊”はいない
そもそもインターネットは、特定の国の中で完結することを前提にしていない。だからこそ、インターネットの普及にしたがって「経済のグローバル化」が進展すると、繰り返し言及されてきたのである。
したがって、海外にあるサーバーに日本人の個人情報が保存されていたとしても、それは極めて自然なことだ。AppleやGoogle、Amazon、Microsoftといったアメリカ企業も、当然に日本人ユーザーの情報を保存している。各社のサービスを利用している以上、そのこと自体は不当ではない。
さらに言えば、通常のデジタルライフを送る上で、「自分の個人情報が海外のサーバーに保存されること」を防ぐ手立てというのは事実上存在しない。日本人の個人情報が日本国内を一歩も出てはいけないというのなら、LINEどうこう以前に、App StoreやGoogle Playからアプリをダウンロードすることさえできないのである。
ネットワークにおける国際分業を否定するとなると、LINEのみならず、現代インターネット空間の大部分を否定することになる。