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LINEの「個人情報の取り扱い」がここまで問題視される理由

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高まる中国への不信感

 LINEの“個人情報”問題が大きく取り沙汰されている一番の原因は、問題の関連企業が中国にあったという点だろう。

 2020年代を迎え、中国に対する感情は世界的に悪化している。アメリカでは民主党のバイデン大統領に政権が移ったが、中国共産党政権への糾弾の激しさはトランプ時代を上回る。

 糾弾の理由としては、チベット人・ウイグル人など少数民族への迫害のほか、香港民主派への弾圧が挙げられている。中国共産党はこれらの地域について「国内の問題であり、外国の介入は内政干渉にあたる」と繰り返し強調しているが、れっきとした人権問題であり、民主社会から厳しい目が向けられて当然である。

 加えて中国では、2017年に「国家情報法」が施行された。これにより人民解放軍や中国政府は、「国家戦略上の必要に応じて」民間企業の保持する情報にも開示を求めることができると定められた。これによって、中国にあるデータ拠点のセキュリティリスクは高まったといえる

 ただし、中国企業さえ避けていれば安全かといえば、そう簡単な話ではない。データが第三国を経由して中国に渡る可能性は常にあるし、“テロ防止”を建前として情報機関に強い権限を与えている国は中国だけではない。ロシアやアメリカもそうだ。

デジタル時代の自己決定権とは

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 そもそも、高度に発達したネットワーク時代に、我々の個人情報が守られなければならない理由は何か。

 それは自己決定権である。我々ユーザーは、自分が入力した情報が、何の目的で、誰によって、どのように使われるか知る権利がある……というのが、「個人情報保護」の背景にある考えかただ。この自己決定権は、経済的な利害とは関係なく存在する

 自己決定権の理屈に照らせば、個別のユーザーが「自分のデータがアメリカのサーバーに保存されるのはいいが、中国のサーバーに保存されるのはイヤだ」という不均等な意思を持っていたとしても、それは尊重されるべきということになる。

 実践可能かどうかは別として、「人権侵害を行う政府に個人情報を渡したくない」という話ならば、ごく個人的にも同意できる。大きく扱われたLINE“個人情報”問題も、「自己決定権」という物差しで測れば、その本質を見定めることができよう。

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