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パワハラ防止法、施行で何が変わる?社労士に聞いた

学び

 職場におけるトラブルの中で、ハラスメントの問題が占める割合が年々高くなっています。

 職場のトラブル解決をサポートする制度のひとつに、都道府県労働局が管轄する「個別労働紛争解決制度」という無料で利用できる仕組みがあります。平成30年度における民事上の労働問題相談件数は延べ約32万3000件、そのうち「職場のいじめ・嫌がらせ」は約8万3000件で過去最高となり、相談件数の26%を占めています。

厚生労働省

平成30年度個別労働紛争解決制度施行状況(厚生労働省)

 かつては相談の主流だった「解雇」をはるかに上回り、7年連続で相談件数のトップとなっている状況です(以下、特定社会保険労務士澤上貴子氏の解説)。

パワハラ防止に法的な根拠が

 職場で見受けられるハラスメントの主なものには、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどがあります。

 このうちセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントについては、男女雇用機会均等法、育児介護休業法等において、労働者がそうしたハラスメントで被害を受けることがないよう、事業主に雇用管理上の措置を義務付ける法的な根拠がありましたが、パワーハラスメントについてはこれまでそういったものがありませんでした

 そのような状況の中、2019年の第198回通常国会において、女性活躍推進法の一部を改正する法律が成立し、労働施策総合推進法が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられることになったのです(令和2年6月1日施行、中小企業は令和4年4月1日から義務化)。

 改正労働施策総合推進法では、職場のパワーハラスメントとは、以下の3つの要素を全てを満たすものであるとしています。

パワハラと認定される3つの要素

パワハラ

※画像はイメージです(以下同じ)

1:職場内の優越的な関係を背景とした
2:業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
3:労働者の就業環境が害されること

 ちなみにパワハラというと多くは上司と部下の関係を想像しますが、必ずしもそれだけではなく、パソコンが苦手な上司に部下が嫌がらせをする、同僚間のいじめなども該当します。また、上司が一定程度強く部下に対して注意をしたとしても、社会的ルールを欠いた行動や、業務上の問題行動に対する指導であればパワハラとは言えません。

 改正法の話にもどります。改正法では、事業主にパワハラ防止のため、労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他雇用管理上の措置を講じることを義務付けています。

 具体的には、パワハラ防止の社内方針を明確化、従業員への周知・啓発、苦情に対する相談体制の整備、被害を受けた者へのケアや再発防止対策等です。そして労働者がパワハラに関する相談をしたことを理由に、解雇等不利益な扱いをしてはならないとしました

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