無人コンビニを作った男が語る「僕が保険証のために起業した」理由
オフィス向け無人コンビニ「600」を順調に展開させている株式会社600の代表取締役・久保渓さんへのインタビュー。
LINE Payの前身であるウェブペイ株式会社を立ち上げた若手起業家の雄が、どのような経緯で新たな事業を立ち上げ、成長させていったのか?
前回は新たに立ち上げた「600」事業について聞きましたが、今回はそれまでの経緯と、起業の秘訣を伺います。
19歳、米国留学中に初めて起業
――今回が4回目の起業と伺っていますが、無人コンビニ開発に関わるノウハウはお持ちだったんでしょうか?
久保渓(以下、久保):前回の起業でウェブペイ株式会社という決済サービスの会社を立ち上げており、それをLINEグループに売却して、LINE Payの事業を担当していました。
そのため、ソフトウェアや決済事業は経験があったのですが、物流やハードウェア面でのノウハウはなかったので、そこはひとつひとつ勉強しながら立ち上げたという感じです。
――初めて起業されたのはいつですか?
久保:19歳の時です。アメリカの大学に進学してコンピューターサイエンス、ポリティカルサイエンスの学位を取り、在学中にひとつ事業を立ち上げました。まあ、結局失敗したんですが……。
その後、2010年にクラウド事業を始め、2年半ほど運営していました。それはフリーミアムサービス(基本サービスは無料で、高度な機能などは有料の形態)だったんですが、無料のまま使い倒すユーザーが多くて、収益になかなか結びつかないまま畳んでしまったんです。
2013年に作ったのが「ウェブペイ」ですね。先程も申し上げた通り、それがLINEグループに買収されてからは2年ほどLINE Payの事業を手がけていました。
19歳の時から走り続けてきて、1年くらい休むつもりだった
――LINE Payの事業ではどのようなことをされていたんでしょうか?
久保:営業、企画、事業戦略などの責任者でした。リリースしたばかりでほぼユーザーの存在しないところから始め、お年玉企画を立ち上げたり、銀行と連携したりとサービスの幅を広げていました。
そのうち、私が在籍していた2年3か月ほどで国内ユーザー数3000万人を突破。四半期の流通金額もグローバルで1000億円ほどのサービスに成長したため、それをひとつの区切りとして退職しました。
――せっかくLINE Pay事業が成功していたのに退職したのは、もったいない気も……。
久保:事業を立ち上げていくというのはキリがない話でして。成功のように思えても、すぐに加盟店開拓やLINE Payの利用頻度を増やすための施策など、やるべきことが次から次へと出てくるんです。ですから、一番結果の出た2017年5月に辞めました。
その時には、本当は1年ぐらい休もうかなと思っていたんです。妻の出産が近かったですし、19歳で起業した時からずっと走り続けてきたので「休むなら今しかない!」と。ですが、結果的に6月の頭に株式会社600を設立しました。健康保険証が欲しかったので(笑)。